今年も、アメリカのラスベガスで「CES 2025」が開催されました。かつては「家電の見本市」と呼ばれていた(そもそもConsumers Electronics Showの略だったわけで)CESですが、近年は展示の範囲がどんどん広がって、あらゆるテクノロジーの見本市…という様相を呈してきているのだそうです。
何だかとても楽しそうですが、一般公開があるわけではなく、私が趣味の欲求を満たすために行くような場所ではありません。とはいえ、ありがたいことに、Web上では多くのテクノロジー系のニュース媒体が、このCESの状況をレポートしてくれています。最近は動画もふんだんに活用されるようになったので、どんなモノがお披露目されたかは、かなり詳細に知ることができます。
今年こそは「新しいPCに買い換える年」にしたい私にとっては、昨年に続いて、特にモバイルノートPC関連でどんな動きがあったのかが気になるところでした。とりあえず昨年末の時点では、ThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Edition(以下「X1 Carbon Gen 13」)がカスタマイズ可能になったら購入を検討しよう…と思っていたところで、もしかするとCESのタイミングでこれが始まるかも?と睨んでいました。
そのために必要だと思っていた重要なパーツについては、正式に発表がありました。X1 Carbon Gen 13に搭載されるSoCのIntel Core Ultra シリーズ2(200Vシリーズ・Lunar Lake)に、vPro対応版が追加されています。vProとは、ざっくり言えば、Intel社が提供している「遠隔操作でPCの管理を行う仕組み」で、企業が社内の端末を一括管理するためにはコレがあると非常に便利です。PCのBTOによるカスタマイズ対応は、個人に1台ずつ提供するというよりも、企業が自社用にカスタマイズした端末を大量に発注する…という目的が先に来るわけで、こうしたニーズに対応するためには、vPro対応版がなくては話になりません。
しかし、レノボの方では今回のCESでX1 Carbon Gen 13に関するアナウンスは全く行わなかったようです。それよりも、全く新しい製品たちを紹介する方にエネルギーを割いています。巻き取られたOLEDの画面がジェスチャーひとつでするする~っと縦に伸びる「ThinkBook Plus Gen 6 Rollable」は、こんなモノが本当に今年発売されるとはにわかには信じられない超変態端末(スゴく誉めてます)ですが、もっとマトモな「次世代のThinkPad」もお披露目されました。
「ThinkPad X9」には、画面サイズが14型と15型の2種類のモデルがあり、どちらもCore Ultra シリーズ2(Lunar Lake)を搭載してCopilot+ PCになれる資格がある製品です。早速、日本法人のWebサイト上でも予約販売が始まっていて、しかも注文時にはカスタマイズまで可能になっています。レノボ自身が「プレミアムビジネスノートパソコン」と位置づけていて、最上級グレードのThinkPad製品ということになるのだと思います。
これまでThinkPadの最上位にいたのはX1 Carbonだったはずですが、これとの位置関係がどうなるのかは、現時点ではちょっとハッキリしません。というのも、ThinkPad X9には、これまでのThinkPadとはずいぶん違う部分がたくさんあり、同列に並べて良いのか迷ってしまうのです。
ThinkPadは既に30年以上の歴史があるブランドで、古くからの愛用者もたくさんいるわけですが、彼らにとって最大の衝撃だったであろう点が、キーボードの真ん中にあった「赤いイボ」ことTrackPointが存在しないこと。大きな触感タッチパッドのみの仕様になっています。
最初に買ったパソコンがThinkPadだった…という妻にこの話をしたら、彼女も相当衝撃を受けていました。「あの赤ポッチ、黒いボディーに映えてかわいかったのに」という反応が彼女らしくて面白かったのですが、彼女自身もTrackPointの操作性に慣れ親しんでしまったせい(?)で、他社製品に乗り換えたときにはタッチパッドの操作にかなり苦労したそうです。
レノボ自身も、ThinkPadシリーズの製品ページで「レノボの伝説的な赤 | すべての ThinkPad の中央に設置されているトラックポイント」と紹介しているくらいで、その存在感と重要性は認識しているはずです。そこをあえて変えたのは、何かしらのメッセージのはずなのですが、何とも読み切れません。まあ、TrackPoint教信者ではない私にとっては、不要な装備が減る分だけコストダウンになって嬉しいなぁ…というのが正直なところで、レノボとしてもこれは新規ユーザー獲得を狙った動きなのかも知れません。コレで反感が強ければ、また元に戻せば良いだけの話ですし。だからこそ「X1」ではないのでしょう。
ただ、TrackPointの他にも、これまでのThinkPadの作法からは逸脱しているのでは?と感じるポイントが結構あります。アルミ素材を前面に出した銀色の筐体、カーソル移動キーが1段下に下がっていない「よくあるタイプ」のキーレイアウト。底面側の冷却ファンや外部接続端子の部分をあえて飛び出させて目立たせた「エンジンハブ」デザインも、写真を見る限りはあまりイケていないように感じます。
ThinkPadが変化してはダメだ!と言いたいわけではないのですが、それにしても、見れば見るほど違和感ばかりで、どうしてこの製品に「ThinkPad」の名前を冠したのか不思議で仕方ありません。レノボには他にも自社で育ててきた「Idea」ブランドもある(そもそもThinkPadはIBMから買ったブランド)わけで、そちらでも良かったのでは?と思います。レノボとしては、せっかく手に入れてもう20年も使っているブランドなのだから、そろそろ自分たちの好きなように使いたい…と思っているのかも知れませんけどね。
X1 Carbon Gen 13は相変わらず固定仕様でのみ提供されていますが、ThinkPad X9のカスタマイズメニューを見ると、今後X1 Carbon Gen 13のカスタマイズがどのようになっていくのか?を考える上で、参考になりそうな点がいくつかあります。
プロセッサー(SoC)は、上位から順にIntel Core Ultra 7 268V vPro/7 258V/5 238V vPro/5 228V/5 226Vというラインナップになっています。Lunar Lake最上位のCore Ultra 9 288Vは用意されていません。この288Vだけ熱設計電力が高いので、スリムな筐体に載せられなかったのではないかな?と思っています。おそらく、X1 Carbon Gen 13でも同様のラインナップになるのではないでしょうか。
ディスプレイは、いずれもOLEDで1920×1200ピクセル・タッチ非対応と2880×1800ピクセル・タッチ対応の2種類から選べます。X1 Carbon Gen 13も「OLEDに最適化した天板」ということで、現在用意されている2880×1800ピクセル・タッチ非対応を含めてOLEDが3種類となるのでしょうか。個人的には、1920×1200ピクセル・タッチ対応のOLEDを用意して欲しいところです。
レノボからはX1 Carbon Gen 13についても「カスタマイズに対応する予定である」との回答を頂いた…と思っているので、とりあえずもうしばらくは待っていようと思います。メールアドレスを登録してあるので、メールのお知らせくらい頂けるとウレシイんだけどなぁ…。
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