昔、このWeekly SSKの前身にあたるSSK Todayで、音楽のデジタル処理の話をしたことがあります。その当時は「MIDI楽器の音はデジタルなのに、デジタルのまま録音することが出来ない。一度アナログにするからノイズの処理も大変」という話をしたのを覚えています。あれから一年半経ちましたが、この間に音楽のデジタル処理に関する環境は劇的に変化しました。今回は、この辺りのお話を少々してみましょうか。もうすぐ冬のボーナスも出ることですし(去年より減ってしまった人もいることでしょうけど)、購入計画の参考にでもしてもらえれば幸いです。
USBのおかげです
USBも今やパソコンの一般的なインターフェースの一つとして市民権を得ましたが、USBに接続する周辺機器がいろいろ登場し始めたのはWindows 98の登場後。USBは最大12Mbpsの能力を持つシリアルインターフェースです。一方、CD並みの音声をデジタルで転送するためには、約1.4Mbps(非常におおざっぱな計算ですが)の速度があれば十分です。というわけで、USBを介して外部でデジタルオーディオのデータを処理する機器が数多く登場しました。
例えば、いわゆるUSBスピーカーはスピーカユニット内でデジタル信号をアナログに変換(いわゆるD/A変換)します。前にSSK Todayで書いたとおりパソコン内部はノイズの宝庫ですから、D/A変換をパソコンの外に連れ出すことが出来るようになっただけでも大きな変化です。RolandのUA-100のように、外部からのアナログ音声を取り込む機械も登場しました。
実は、USBはパソコンを使った音楽の世界にもう一つ進化をもたらしました。MIDIインターフェースとしての利用です。先に出たUA-100も、オーディオ系の各端子以外にMIDI IN/OUT端子を装備しています。最近は、RolandのSC-8850/8820やYAMAHAのMU2000/1000のように、USBケーブルが直結できるMIDI音源機器もありますね。MIDIの規格としての転送速度はたったの31.25Kbps。USBにとってはほんの片手間程度のお仕事です。USBの高いデータ転送能力を生かし、同時発音数やチャンネル数を増やしたり、音源の反応速度を向上させたりしています。残念ながら、これらの機種に付いているUSB端子は単なるMIDIインターフェースで、オーディオ情報を取り出すことは出来ないようです。
光デジタル端子も増えました
USB端子を利用する流れとは別に、MDやCDに装備されているものと同じ光デジタル端子を装備している機器も増えてきました。最近はパソコン用のサウンドカードにも、光デジタルの入出力端子を持っているものがかなりあります。カノープスのDA-Port USBは、「USB端子に接続する外付け型の光デジタル入出力インターフェース」という変わり種です。そして、ついに外付け型のMIDI音源にも光デジタル出力が装備されました。先に出てきたYAMAHA MU2000/1000です。このクラスの機械で完全デジタル処理が出来るというのは、私のような自称「オタッキーなアマチュアミュージシャン」にはたまらない魅力になりそうです。
光デジタル端子による接続の利点は、普通のオーディオ機器にもかなり普及していること。現状ではMDにデジタル録音できる唯一のインターフェースと言って良いでしょう。
ついに来た、完全ソフトウェア処理
Rolandから登場したソフトウェア音源、VSC-88H3も別のアプローチでとんでもないインパクトを与える製品です。ソフトウェア音源(説明は「SSK Worldを聴くために」参照)ですから、通常の使い方ではMIDIファイルを演奏させて聴くことになるんですが、VSC-88H3は出力先にサウンドカードではなくファイルを指定できるのです。この場合、極端な話オーディオ関係のハードウェアを全く持たなくてもデジタルの音声データを作れてしまうことになります。これなら、比較的計算能力の低いパソコンでも高音質の演奏が作れますしね。…もちろん、サウンドの再生機能がなくては聴くことが出来ませんが。
こんな動きもあります
YAMAHAが中心となって、IEEE1394インターフェースを使った音楽データのやりとりを規格化する動きがあります。IEEE1394は、比較的一般的なところではデジタルビデオの画像のやりとりに使われるインターフェースで、SONYのVAIOシリーズやMacintoshに装備されていて、最大400Mbpsの猛烈なスピードを持っています。もちろん、この新規格では演奏データだけでなく音声のデータも行き来します(しかも圧倒的な多チャンネルで)。対象になるのは電子楽器、オーディオ機器、パソコンということのようですが、パソコンには既に普及を始めているインターフェースであり、今後の動向が注目されます。
…う~ん、「購入計画の参考に」どころか、ただ単に情報を混乱させたような気がしますね。それもそのはず、私自身がまだ購入計画を立てていませんから。新しいパワフルなパソコン本体も欲しいですしね。結果がどうなったかは改めてお知らせするかも知れません。
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