昨年11月に、「自作PCドタバタ日記」でWindows Vista RC1版の導入レポート「なかなか開けなかった眺望」を公開していましたが、この中でレッツノート・CF-R4にもインストールしたことをほのめかしています。もちろん、実際にテスト済みで、12月上旬に公開するつもりでレポートを書きかけてありました。かなり旬は過ぎてしまった感はありますが、大事なレポートだと思いますし、まとめておきましょう。まずは昨年12月にタイムスリップしてからお読みいただけると幸いです。
デビューはしたものの
いよいよ来月末から一般向けに販売されるMicrosoft社の新OS、Windows Vista。既に先月末から企業等向けの「ボリューム・ライセンス」での供給は始まっています。IT業界ニュースに限らず、一般の新聞でもこれがかなり大きく取り上げられていますね。注目の産業分野の、5年ぶりになる大ニュースではあるわけですが、まだ一般市場が動いていないので、実際の盛り上がりはあまり感じません。
「企業等向け」と表現はしましたが、実際にはボリュームライセンスは個人での購入も可能で、これを使えば入手できないこともありません。しかし、これを利用するためには決められた数の複数ライセンスを購入する必要があります。この「ライセンス」には、Windows VistaだけでなくMicrosoft社製品の多くが含まれるため、既に4台のパソコンが現役で稼働している我が家の場合、必要要件を満たすのは不可能ではありません。ただ、やっぱり多額の出費が痛いんですよね。Windows Vistaへの移行を、自信を持って決断できるハードウェアばかりではありませんし。
その「自信を持って決断できないハードウェア」がレッツノート。自作デスクトップのような過剰なまでの基礎体力を持っているわけではありませんからね。もちろん、身の丈に合わせたパフォーマンスのバランスが彼らの魅力なんですが、さすがに新OSでの動作は未知数です。そこで、とりあえずは一般向けにも公開されているRC1版をインストールして試してみることにしました。
もはや人柱ではない?
実は、10月のスペシャルT&Tイベントで、Vistaの動作に関しては松下電器の方から極秘情報を入手していました。「オフレコで」とのことだったので詳細についてはここではお話しできませんが、この情報のおかげで、「Vistaもちゃんと動く」という確信を持つことができました。
また、松下電器のWebサイトでは、既に「Windows Vista評価情報」が公開されています。これを見れば、動作状況をだいたい掴むことができます。現時点ではどのドライバが動作しないのか、どんな不具合が起きるのか…CF-B5RにWindows 2000やWindows XPをインストールしたときに私が調べたようなことは、ほぼ明らかになっています。しかも、CF-R4に関しては対応ドライバが公開されることも決まっています。
これなら、ドライバの公開を待って、正規版のVistaを入手してセットアップした方がずっと簡単でしょう。正直なところ「人柱」的楽しみはほとんどありません。それでも、そもそもVistaが「使える」OSなのか?という、動作の重さや操作性の確認のためには、やっぱり実際に使ってみる必要があります。結局インストールは決行することにしました。…単に苦労することに快感を得たいだけなのかも知れませんが。
確かに動きはするけれど
あくまでもテストですから、現在使っているWindows XPの環境はそのまま残しておきたいところです。もともと、CF-R4のハードディスクはシステム領域とデータ領域、2つのパーティションに区切って運用していましたから、データ領域の方にVistaのシステムをインストールして、デュアルブートにしてみることにしました。
インストールの作業は、かなり簡単になっています。今回は、システムにすでにWindows XPがインストールされている状態なので、XPが起動している状態でVistaのCDを入れます。普通のアプリケーションソフトと同様にインストーラが起動して、あとは基本的に画面の指示に従っていくだけです。このときに、既存のXPをアップグレードするのか、新規にVistaを導入するのかを選択できます。新規導入を選べば、XPとVistaを選択して起動できるデュアルブート環境が構築されるのは、Windows 2000の頃から変わらない使い勝手です。
インストール中には特に引っかかる場面もなく、無事Windows Vistaはインストールされました。最初に目につくのは、デスクトップ右端に並び、Vistaの特徴の一つでもあるサイドバー。いろいろな情報が常時見られるのは便利なのかもしれませんが、デスクトップ上でこれだけスペースをとってしまうと、肝心の作業スペースがかなり圧迫されます。もちろん、ウィンドウを最大化して作業すればいいのでしょうけど、それではせっかくのサイドバーがちょっともったいない気もします。(Vistaプリインストール版のレッツノート・CF-Rxシリーズでは、工場出荷状態でサイドバーが非表示にされているようです)
デスクトップ上のアイコンのサイズも、これまでより一回り大きなものが標準で設定されています。ウィンドウ枠周りの描画も、XPと比較するとかなり太くなっています。そんなわけで、画面を見ての印象は「狭いなぁ」でした。サイドバーの分を割り引いたとしても、1024×768ドットのXGAでは情報量が足りません。自作デスクトップの1280×1024ドットでも、まだちょっと物足りないくらいです。Vistaでワイドディスプレイが推奨されているのもわかる気がします。
せっかくのVistaなのに
それ以上に不満だったのは、Windows Vista最大の特徴の一つである新インターフェース・Aeroが動作しないこと。CF-R4に搭載されているビデオ統合型チップセットの915GMSは、メモリ帯域が足りないことを理由に、Aeroには非対応ということになったのだそうですね。当初は対応されると思って期待していたんですが…。
別にウィンドウを3次元的に並べてタスク切り替えをしたいわけではありませんが、問題なのはCPUの負荷。一見単に演出が派手になっただけに見えるAeroですが、あの表示には基本的にビデオカード側の能力を使いますから、実はCPUへの負担はむしろ少ないそうですね。XPまでの画面描画でも、ビデオカード側の2D系の支援機能は使われていたそうですが、VistaでAeroを使わない状態だと、これも使わずにCPU主導で描画が行われるのだとか。そのせいか、XPを使っていたときと比較して、CPUの稼働率がやや高いようです。実際に、ウィンドウ操作にもちょっと「もっさり」感があります。CPUへの負荷が増えれば、当然動作時間への影響もあるはずです。残念ながらバックライトの明るさが制御できず(ホットキーのドライバが提供されていませんからね)、具体的に計ってみるのは断念しましたが。
また、これまで以上にバックグラウンドで動作するタスクが増えているようで、作業を何もしていないときでもCPU負荷が上昇したり、ディスクアクセスが発生したりします。これでは、さらに動作時間は短くなりそうです。レッツノートの大事な能力の一つである、バッテリーでのスタミナに不安を感じてしまいます。
松下電器の「Windows Vista評価情報」によると、CF-R4にWindows Vistaをインストールした場合、動作させることはできるが、あまりおすすめはしない…という立場のようです。確かに、機能的にも、パフォーマンスでも制限を受けてしまい、「Vistaならでは」という恩恵は受けられなさそうです。とりあえず、CF-R4についてはWindows XPのままで使っていくことにしました。当面はMicrosoft社でもXPのサポートは継続されるようですしね。
その後1年が経ちますが、今でもCF-R4はWindows XPで運用中です。Vistaがないと困る…という場面はまだ出てきませんし、意外にこの調子で長い間使うことになるのかもしれません。そうなると、そろそろバッテリーの寿命が心配になる頃ではあるんですが。
ただ、Windows Vista自体には、フラッシュメモリを積極的に活用するなど、モバイルでの利用を考えた機能も用意されています。既にレッツノートでも実現しているデュアルコアCPUの採用も含め、ハードウェア側の対応が進めば「Vistaでモバイル」は決して悪くないと思います。Vistaは、まだ今年発売になったばかりのOSです。あらゆる分野で開発者の皆さんがVistaの使い方に慣れてくると、またおもしろい展開があるかも知れません。
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