Windows久々のメジャーバージョンアップ版・Windows Vistaは、無事予定通りの2007年1月30日に発売されました。…もっとも、ここに来るまでには何度も計画の変更や延期があったわけですが。その後かなり時間が経ちましたが、Windows Vistaは業界の思惑ほどには普及していないようです。
一般のユーザーたちにとっては、Windows XPがあれば「現在のパソコンに期待していること」は一通りできるわけで、Vistaにわざわざ乗り換える必要性が感じられない…というのが正直な気持ちだと思います。XPのサポート期間が延長されたので、急いで乗り換えなくても当分は安心ですしね。裏を返せば、Vistaならではの新しい魅力的な体験がアピールできない限り、この状況は変わっていかないのでしょうけど、これはなかなか難問です。
私自身はといえば、「OSまにあ」の血が騒ぎ、発売前にRC1版をインストールしてはみたわけですが、WPC TOKYOで感じた物足りなさは結局解消できずに、1月の時点でのVistaの導入は見送りました。ただ、これも当時のメインマシンだったAthlon 64 X2機にRC1版がすんなりとインストールできていれば、また違った展開になっていたのかも知れませんね。OSのためにハードウェアまで交換する労力と経済的負担を跳ね返すだけの魅力がなかった…ともいえます。
そんな状況が変化したのが、2月末に職場にVistaパソコンが導入されたこと。「ウチの予算ではなかなか更新できないのだし、できるなら新しいものを」ということで、私もアドバイスをして選定したのですが、これが間違いの始まりでした。この最新鋭機、それまで使っていたソフトが動かなかったり、さらにはOS自体も動作が不安定になったり…とトラブル続き。しばらくの間、全然仕事にならない状況になってしまいました。後になって、メモリが不良品だったことがわかり、交換する羽目になったんですけどね。
こんなときに困るのが、自分自身がVistaを全然理解できていないこと。質問を受けても、インターネットなどで情報を探りながら対応していくしかありません。パソコン整備士の端くれとしても、自らのパソコンサポートに関するスキル(本業とは全然関係ないんですが)を上げていくために、やっぱり個人の趣味でいじれるVistaパソコンは必要です。ちょっと重くなっていた腰を上げて、Vista導入を考えることにしました。
Windows Vistaを導入する上で、結構頭を悩ませるのが「どのVistaを選ぶのか」です。Vistaの製品ラインナップには、Home Basic、Home Premium、Business、Ultimateの4つのグレードがあり、しかもそれぞれに32bit版と64bit版があります。
Vistaの最大の特徴であるAeroインターフェースが使えないHome Basicは論外。Home Premiumに付属するMedia Center系の機能(「パソコンテレビ」のための機能ですね)は要らない一方で、Businessでサポートされているファイル履歴の管理は魅力的です。おそらく私にとってのジャストフィットはBusiness版なのでしょう。それでも、サポート技能向上のためには、おそらくVistaでは最大のインストール数になるであろうHome Premium版がカバーできていないのは困ります。そこで、今回は「とりあえず全部入り」のUltimate版を選ぶことにしました。新しくやりたいことが出てきたときに、その機能が入っていない…というのでは悔しいですし。
「32bit版か、64bit版か」の選択は、サポート技能の向上を考えれば、圧倒的にインストール数が多い32bit版が良いのでしょうけど、ここはあえて64bit版を選択。理由は、これはもう「64bitを生かせるソフトを使いたいから」ということに尽きます。私が使いたいソフトの中で最もヘビーな2つが、いずれも64bit版Vistaへの対応を済ませています。
RC1版をインストールするときにネックになっていたのが、オンボードのRAIDデバイスがVista非対応だったこと。この点を解消するために一番安価なのは、RAID拡張ボードをPCI Express x1スロットに差す方法だと思うんですが、追加ドライバの導入が必要だったり、ハードウェア同士の相性問題を増やす可能性があったり…というデメリットもあります。そこで、今回は思い切ってマザーボードごと変えてしまうことにしました。
新しいマザーボードには、ASUSTeKのM2N-SLI Deluxeを選びました。電源レギュレータ部分の銅製のヒートシンクと、そこからチップセットに伸びるヒートパイプが目を引きます。これまで使っていたGA-K8N Ultra-9の持っている機能は一通り備え、価格も2万円以下とまあまあリーズナブルです。もちろん、「Vista対応」を謳っています。
ただし、M2N-SLI DeluxeはSocket AM2対応製品ですから、これまで使っていたCPUとメモリは使えなくなります。どうせ使えなくなるのなら、IntelのCore 2系プラットフォームに乗り換えても構わなかったのでしょうけど、引き続きAthlon 64 X2を使うSocket AM2を選んだのは理由があります。一つは、Intel Core 2シリーズの64bit環境への対応はまだ不十分と言われていることもあり、64bitコードの実行にはこちらの方が有利であると考えたこと。もう一つは、より安価で高パフォーマンスのCPUが購入できるから…要するに経済的理由です(笑)。
ここに載せるCPUには、Athlon 64 X2 5600+をチョイス。これを購入した2007年4月当時は、価格改定があって2万円台前半に「大幅値下げ」されたところでした。既に3GHz動作の6000+も登場していましたが、発熱の大きさを嫌っての選択でした(その後さらに価格は下がり、6000+にも低消費電力版が登場しましたが)。これまで使っていたSocket 939版のAthlon 64 X2 4400+と並べると見た目はそっくり。まるで間違い探しです。ただし、ピン配列が微妙に違うので、CPUの差し間違いはありません。
ただ、付属のCPUクーラーはかなり見た目が違います。Athlon 64 X2 5600+に付属していたものは、シンプルなアルミ製で、ファンもかなり大人しい雰囲気です。発熱自体がかなり少なくなっていることが予想されますね。動作周波数は3割近く上がっているのに…技術の進歩はありがたいものです。
Socket AM2では対応メモリがDDR2 SDRAMに変更されていますから、こちらも新しいものが必要になります。800MHz動作のPC2-6400で、1GBを2枚用意しました。定格内で最速のものを、とりあえず必要な分だけ…というところですね。64bitOSの環境を真に発揮させるにはもっと大量のメモリが必要ですが、まだまだ2GB以上のDDR2 SDRAM DIMMは高価です(もっとも、こちらの価格もその後暴落しましたが)。
これ以外のパーツはそのまま使い、新・Athlon 64 X2タワーが完成しました。これに、64bit版のWindows Vista Ultimateを入れていったわけですが、結論から言えば「拍子抜けするくらい簡単」。VistaのDVD-ROMを挿入して本体の電源を入れ、後はグラフィカルな対話画面の中で指示に従っていくだけです。途中でRAIDドライバのインストールを求められるはずだ…と、久しぶりにフロッピーディスクを用意して待っていたのですが、これすらも必要なし。最初から、BIOS上で設定しておいたアレイが単一のハードディスクドライブとして認識されていました。
ネットワークも、ビデオカードも、サウンドも、Vistaにもともと入っているドライバが組み込まれ、ひとまずちゃんと使える形になります。一部インストールされなかったドライバもありましたが、改めてWindows Updateから検索すれば、ほとんど問題なく読み込まれてしまいます。実に簡単になったものです。もっとも、最適なドライバが組み込まれているとは限らないわけですが。例えば、ビデオカードのドライバは、ベンダー提供のものをダウンロードすればさらにパフォーマンスが改善するはずです。
ただ、この簡単なインストールを実現するために、私は心臓部を総入れ替えさせられたことを忘れるわけには行きません。もともと、そんなに古いパーツではなかったのに…ハードウェアを思いっきり選り好みする困ったヤツです。
職場のVista機がトラブルを連発していた頃、帰宅してから「Vistaはとんでもない悪ガキだ」と愚痴をこぼしていたら、紫緒が言いました。「でも、ソフトやハードを選り好みするのって、むしろブランド好きの女の子っぽくない?」。確かに、言われてみたらその通りかも。それ以来、我が家では「ワガママ娘のVistaちゃん」というイメージが定着したのでした。まだ生まれたばかりなんですから、多少のワガママは許容しなくてはならないのでしょうね。
とりあえずインストールは完了しましたが、Vistaちゃんのワガママぶりはこの程度では収まりません。これについては、引き続き報告したいと思います。また回を改めて。
余談ですが、うちの娘がまだ紫緒のお腹の中にいるとき、ITヲタクのパパ(つまり私)を揶揄してか、何故か周囲の皆さんから「びすたちゃん」と呼ばれるようになってしまいました。「男の子なら美寿太くん、女の子でも美寿多ちゃんで行けるよね」などと、皆さんの空想もエスカレートするばかり。「そんな名前は嫌だ」と言いつつも、いつの間にか我が家でもこの胎児名が定着してしまいました。
もちろん、実際に生まれてきた子供には、そんなとんでもない名前は付けませんでしたけどね。ただ、何かにつけてよく泣く彼女を見ていると、どこか「ワガママVistaちゃん」を連想させます。もしかして、「びすたちゃん」という名前が良くなかったんでしょうか?
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