久しく閑古鳥が鳴いていたMusic Worldですが、久々にHotな話題が提供できそうです。巷で話題沸騰中の新人歌手・初音ミク(はつね・みく)が、ようやく私のスタジオに来てくれました。2週間のお試し期間中に、何か歌ってもらえないかな?と思っているところです。彼女と正式に契約するかどうかは、その後で決めることにしましょう。
初音ミクは、皆さんの前に現れるときにはアニメチックな女の子の姿をしていますが、その実体はパソコン用のソフトウェア。しかし、このソフトウェアをインストールしても、彼女が画面に現れて歌ったり踊ったりしてくれるわけではありません。実に殺風景な、VOCALOID2 Editorというソフトがスタートメニューに登録されるだけです。
VOCALOID2 Editorを起動して、音程や音の長さ、そして歌詞を入力していくと、指示通りに歌声が聞こえてきます。私たち、音楽を制作する立場から見ると、「彼女」はパソコンで計算により楽器音などのデータを生成する、いわゆるソフトウェア音源の仲間です。このソフト単独で動くだけではなく、他の音楽制作ソフトとも連携して演奏することが可能な仕組みになっています。
VOCALOID2は、ヤマハが長年取り組んできた「歌声合成エンジン」の最新版。実は、歌声の合成については、既に10年前にハードウェア音源で実現したPLG100-SGという製品が市販されています。私はこれを持っていて、自作曲の「明日を探しに」「風の向くまま気の向くまま’98」で「歌うMIDIデータ」を作っています。
PLG100-SGの頃のシステムは、母音と子音の倍音構成を演算する、純粋な合成音声でしたが、その後登場したVOCALOID(とその後継技術であるVOCALOID2)では、本物の人間の声を元データとして使います。「初音ミク」は、厳密に言えばこの元データ、言い換えるとソフトウェア音源の音色に当たる部分の名前といえます。これで、ずいぶん歌声らしさ、人間らしさは出てきましたが、まだまだ表現力では生身の歌声に及びません。2004年の初代VOCALOIDシリーズの頃から、商品の存在は知っていましたが、売れているという話は聞いたことがありませんでした。どうしても生身の歌声と比べてしまうのでしょうね。
それなら、いっそのこと思いっきりバーチャル感を強調して、アニメ風キャラの歌を声優さんの声で歌わせてみよう…という形で商品化されたのが初音ミクだったようです。そして、この戦略が大当たり。音楽用のソフトウェアとしては異例の大ヒットになり、現在でも入手はやや難しい状態になっています。また、彼女のキャラクターが大きく取り上げられ、個人ユーザーの手で歌って踊る動画が作られたり、フィギュアが商品化されるなどの展開を見せています。私から見ると、発売されたこと自体は知っていましたが、あまりの盛り上がりに面食らっている…というのが正直なところです。
初音ミクの市場販売価格は約15,000円。この手のソフトとしてはかなりお手頃な設定になっていますが、それでも衝動買いできる値段ではありません。そもそも自分の環境でちゃんと動作するのか、他のソフトとの連携はどうなのか…など、確認しておきたいことも多いですしね。もし体験版があれば…と思っていたところ、昨年11月にDTM MAGAZINEが付録として体験版を収録しました。この情報を聞きつけて探し回ったんですが、既にどこに行っても店頭では売り切れ。ネット上では定価の何倍ものプレミア付きで販売されているという状況で、このときは入手をあきらめました。
その後、この爆発的な売れ行きもあってか、12月に「DTM MAGAZINE 増刊 CV (キャラクターボーカル) 01 初音ミク 2008年 01月号」が発売になりました。これを購入し、ようやく体験版を入手できたわけです。
最初にもちょっと触れていますが、体験版の使用期限は14日間。動作条件に「Pentium 4 2GHz以上」と書いてあるところを、無謀にもPentium M 1.2GHzのレッツノートにインストールしてみましたが、単音で歌わせるだけなら何とか動いてくれました。自作タワーにインストールするのを後回しにすれば、お試し期間は少し延ばせそうです。
体験版では、作成したMIDIデータの保存はできませんが、歌声をWAVファイルとして出力することができます。これで、簡単な曲なら作ってみることができます。皆さんにも是非聴いていただこうと思っていますが…この続きはまた回を改めて。
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