つるの剛士のソロデビューアルバム・「つるのうた」を聴きました。テレビ番組「クイズ!ヘキサゴンII」での「おバカ」キャラでブレイクして、ユニット「羞恥心」のリーターとして昨年は紅白歌合戦にまで出てしまった彼ですが、どう見てもイロモノの企画ユニットの割には、彼の歌声は意外に(と言うのも失礼なくらい)まともでした。別のテレビ番組の企画でも歌唱力が評価され、今回のアルバム発売となったようですね。そのときに歌っていた「M」(プリンセス・プリンセスの名曲ですね)も収録されています。
最初は、妻の紫緒が「買ってみようか」とかなり興味を示していたものの、私はそれほどでもなかったんですが、ちょっと気が変わったのが、「ヘキサゴン」の番組中で彼が歌っていたある曲を聴いてから。その曲「永遠」は、KANの1991年のアルバム「ゆっくり風呂につかりたい」に収録されています。あの「愛は勝つ」の大ヒット直後のアルバムで、私も当時聴きましたが、あの強力に鼻にかかった歌声はともかく、印象的なメロディーラインとアレンジの緻密な計算が記憶に強く残っています。こんな曲を掘り出してきて選んでしまう彼がどんなものを作ったのか気になって、買ってみることにしました。
選ばれている12曲は、新旧取り混ぜられていますが、いずれもオリジナルには聞き覚えのある曲。一般向けには先の「永遠」が一番馴染みがない曲かも知れません。弟・ささっちと同学年に当たる彼のセンスで選ぶわけですから、こうなるのは当たり前なのかも。
高音域を生かした熱唱系の歌い方で、特に「M」や「永遠」、山崎まさよしの「One more time, One more chance」などのバラード系の曲は感情を込めてしっとりと聞かせてくれます。これで締めるかと思ったところで、最後にテレビアニメ「聖闘士星矢」のテーマ曲「ペガサス幻想(ふぁんたじー)」をノリノリで歌ってしまうところが何ともお茶目です。
もともとカバーアルバムは結構好きな方なんですが、それは数々の個性的な名曲をアーティストがかみ砕いたり、ねじ伏せたりして自身のものにしていくところに面白さを感じるから。歌手が本業でない彼にそこまで期待するのは無理がある気がしますが、どうして、なかなかがんばっています。意外に「聴ける」作品に仕上がっていますね。「永遠」は、「愛は勝つ」がそうであったように転調が続く意外な難曲なんですが、これも何とか歌いこなしています。
ただ、このアルバムの楽しみ方は、自分たちもよく聴いていた懐かしい曲を、歌が上手い友達にカラオケで歌ってもらって楽しんでいるのとちょっと似ている気がしました。私自身もカラオケで歌ったり、聴いたりした曲ばかりです。昨年あたりから流行っている、アラフォー世代(Around Forty;40歳前後の女性を指す)をターゲットにした商品と、ちょっと重なっているところもありますね。
先にも触れたとおり、つるの剛士といえば「ヘキサゴン」で珍回答を連発する「おバカ」キャラたちのひとりなんですが、そんな彼が誰にも負けないトップレベルの知識を披露するジャンルの一つが音楽関係。楽典用語の問題でも的確な正解が返ってきます。
彼は、ギターをはじめ様々な楽器が演奏できるのだそうですね。ある番組で、お茶の水の楽器店に出かけていろんな楽器を物色しているのを見たことがあります。音楽のバックグラウンドがあるからこそ、カバーアルバムも様になるわけです。
そもそも彼の本業は俳優な訳ですが(「ウルトラマンダイナ」で有名になったんですよね)、他にも将棋、釣りなど結構多彩な趣味を持っています。3児の父親で、子育て番組に出ていたのも見たことがあります。そういえば、この4月からは河津バガテル公園が出ていた「メイちゃんの執事」の後に始まった「アタシんちの男子」で久しぶりに連続ドラマのレギュラーとして出演していますね。
「ヘキサゴン」には、彼の他にも大勢の「おバカ」な面々が登場します。「おネエキャラ」もそうだと思うんですが、「おバカ」と言われる彼らも、ちゃんと一芸を持っているからこそ注目されるわけで、単に珍回答を連発するだけでは生き残れるはずがありません。
既に私はあの番組はクイズ番組ではなくバラエティーだと思って見ています。クイズで正解の数や早さを競わせることが目的ではなく、むしろ珍回答を引き出すことを狙って演出しています。昔から、クイズ番組では正解率の低い解答者をレギュラー出演させることで場を盛り上げる手法が使われていたと思うんですが、ここまでバラエティーに徹しているのは最近になってからの傾向のような気がします。
珍回答がこれだけ連発されると、わざとやっているんじゃないか?台本なんじゃないか?と思うこともあります。見ていても、彼らは頭の回転自体は全然鈍そうではありませんし、それどころか臨機応変にあれだけの解答を生み出せるのだとすれば、むしろ頭の切れは良い方に属する人たちだと思います。そういえば「羞恥心」の3人は全員俳優です。どこまで演技しているのやら。
考えてみると、「おバカ」と言われる面々は、単に「一般常識」とか「教養」とか、あるいは学校で勉強するような「数学」や「理科」などの分野が苦手なだけなんですよね。今の10代から20代の人たちは、学校で学ぶべきと決められた内容が大幅に減らされた「ゆとり教育」を受けて育ってきました。ある意味教育施策の被害者なのかも知れません。だからといって、これでも仕方ない…とはちょっと思えないんですが。
その一方で、いろいろな知識の豊富さを並々ならぬレベルで競う「インテリ芸能人」という切り口もよく見かけます。一流と呼ばれる大学を卒業した高学歴の芸能人にもスポットライトが当たるようになりました。どうもクイズを使ったバラエティ番組の作り方が二極化してきているようです。これもある意味「格差社会」を投影した姿なのかも。
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