これからが大変

10月1日に、プロ野球セ・リーグでは中日ドラゴンズの4年ぶりのリーグ優勝が決まりました。といっても、この日はドラゴンズの試合はなく、阪神タイガースがこの日の試合で敗れ、ドラゴンズが残り1試合で負けた場合と、タイガースが残りすべての試合に勝利した場合で勝率が並ぶ…という状況になりました。最終勝率が同じなら、直接対決で勝ち越した方が上位になる規定があるので、このカードで13勝9敗2引き分けと勝ち越しているドラゴンズの優勝が決まったわけです。

翌日の10月2日が、ドラゴンズの今季最終戦でした。以前から、この試合よりも前にリーグ優勝が決まった場合には、ファンサービスの意味も込めて、決まった当日ではなくこの日の試合終了後に胴上げを行う…ということになっていました。最終戦ですし、せっかくなら勝利で終わってほしかったんですが、前日のビールかけ(こちらは優勝決定当日にちゃんとやったんですね)が響いたのか、結果は3-2でドラゴンズの負け。それでも、落合博満監督は試合終了後にちゃんと6度宙に舞いました。

今季のパ・リーグでは、福岡ソフトバンクホークスが自らの試合中に他球場の結果でリーグ優勝が決まり、結局自分たちは試合に負けた後で胴上げ…という、ちょっとカッコ悪い事態になったんですが、それ以上に締まらない結果でしたね。何となく、こうなるような予感もしていたんですが…。まあ、どちらも今季の144試合をすべて戦い終わったところでの結果ですから、最後の1試合の結果をとやかく言うべきではないのかも知れません。半年間の長丁場を最高勝率で駆け抜けた価値は、もはや消化試合に過ぎない1試合に負けたくらいで消えるものではありません。

ただ、プレイボールの時点では自らの勝敗が優勝に関わる可能性があったので、真剣勝負をせざるを得なかったホークスとは違い、ドラゴンズの最終戦は、消化試合というよりもむしろ次に向けての調整、あるいはテストの色合いが濃いものになっていました。実に多くの選手がグラウンドに立ちました。選手たちも、そしてそれ以上に監督やコーチたちが、144試合よりもずっと先を見ていたはずです。大変なのはまだまだこれから。長ければあと1ヶ月以上戦いは続くんですからね。


ところで、本来なら日曜日更新のWeekly SSKなんですが、落合監督が前代未聞の気になる発言をしていたのが気になって、1日待ちました。そして、それは言葉通り今日・4日に実施されました。ドラゴンズの一軍出場登録選手28人全員が、登録を抹消されたんです。

ドラゴンズは、今月20日のクライマックスシリーズ(CS)・ファイナルステージまで、2週間以上試合がありません。故障者の状態を見極め、選手たちの間の競争意識を維持する狙いがあるようですが、こんな話は今まで聞いたことがありません。一つ心配なのは、フリーエージェントの資格要件になる一軍登録日数で影響の出る選手がいないか?なんですが…。それにしても、どんな妙なことをやっても「オレ流」の一言で普通に片付けられてしまうのは、落合監督にとっては間違いなく得だと思います。

CSが開催されるようになって以来、リーグ1位通過のチームには、長いブランクによる試合勘の鈍りが強敵として立ちはだかるようになりました。チームの勝ち負けにとどまらず、故障などを誘発してしまわないか心配になります。ただでさえ、一発勝負に近い大きなプレッシャーを与えられて臨む試合です。いろいろ考えると、試合会場の確保なども含めて、いろいろな立場に多くの負担をかける割には、得るものが少ないシステムのような気がします。


CS出場の道が閉ざされたチーム、そしてそこに所属する選手たちにとっても、これからが大変です。既に、多くの球団が来季の戦力構想から外れた選手に今後の身の振り方を確認しています。

日本球界最年長である工藤公康投手も、埼玉西武ライオンズから肩をたたかれました。しかし、47歳にして彼はまだまだやる気満々。引退セレモニーを打診されてもきっぱり断り、海外も含めて移籍先を探すのだそうです。今季はほとんどいいところがありませんでしたが、何しろ本人の気持ちが全然切れていませんから、もう少し私たちは楽しませてもらえるかも知れません。

一方で、今年は若い選手たちがポスティングシステムでメジャーリーグを目指す動きも目立ちます。東北楽天ゴールデンイーグルスの岩隈久志選手の話題には以前に触れていますが、やはり球団はメジャー挑戦を認めたようです。北海道日本ハムファイターズのダルビッシュ有投手も、ポスティングでのメジャー行きが確実視されていますね。もちろん、彼も日本を代表する投手の一人ですから、複数球団が、相応の金額で競り合うはずです。

前にも書いたとおり、ポスティングはフリーエージェントによる移籍と比べると球団が得をするシステムです。若いうちに挑戦できる選手たちにとっても、悪い話ではないのかも知れません。でも、彼らが出て行った後の日本のことを考えると、寂しくてなりません。ぽっかり空いた穴はどう埋められるのか。入札金で海外や他のチームから一流選手を連れてくるだけでは、決して埋まるものではありません。


最後にもう一つ大変な話を。横浜ベイスターズが、ついに身売りされるようです。2002年にTBSがオーナー企業になって以来、ほとんど見せ場も作れず、すっかり最下位が定位置になりました。これでは広告効果どころではありません。

現在は、住宅機器のINAXやTOSTEMを傘下に持つ住生活グループへの売却、新潟への本拠地移転…などという話が聞こえてきますが、地元企業の家電量販店・ノジマが手を挙げるなど、まだまだ情勢はどうなるかわかりません。オーナーが交代した方が、ベイスターズにとってはきっとプラスになるとは思うんですが、あまりにビジネスに徹せず、野球とチームへの愛を持って、文化活動に近いスタンスで取り組んでもらえる方がうまく行くのではないでしょうか。この不景気に、それは非常に難しいことではありますが。

実は、その点で今ちょっと心配しているのが、楽天がイーグルスを見限るのではないか?ということ。ブラウン監督を2年契約の1年目で「結果がすべて」とばっさりクビにしましたが、あまりにもドライすぎるような気がします。球団創立の年に、田尾安志監督を3年契約の1年目でクビにしたのを思い出します。ブラウン監督は多くの選手に出場機会を与え、育成面では成果が出つつあった気がします。最下位でも、優勝でも、地元のファンたちが熱いイーグルスの観客動員はそう変わるとは思えないんですけどね。

さすがに今年、来年…というレベルの話ではないと思っていますが、経営のスピードが非常に速い会社ですし、全然予測が付きません。「5年後にこの球団がまだ存続しているか」の予想を問われたら、私は答えに窮します。選手たちも、ファンも好きなので、何とか生き残ってほしいんですが…。


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