8月に購入した新しいコーヒーメーカー・ECE-1000は、相変わらず大活躍しています。9月末くらいまでは、毎日のようにアイスコーヒーを淹れ続けてくれました。
アイスコーヒーはホットコーヒーよりも手間がかかるので、自宅で淹れるのがちょっと面倒に感じることもあり、これまではスーパーで紙パック入りのブラックのアイスコーヒーを買ってきてしまうことがありましたが、今年はほとんど自家製で過ごせました。さすがに1杯分ずつ淹れるのはあまりにも大変ですし、1リッターほど作って冷蔵庫に数日間保存するわけですが、やっぱり淹れたては紙パックとは全然違います。
最近は、ホットコーヒーを淹れる通常営業になっていますが、以前よりも1回あたりの量が多くなっています。理由は、妻の紫緒がステンレスマグでコーヒーを持って歩くようになったから。私は、職場でもレギュラーコーヒーが飲める環境にあるので、そこまでする必要はないんですが、様々な場所に出かけることが多い彼女の場合、「どこでも美味しいコーヒーを飲む」ためには、持ち歩くのが有効な手段です。スターバックスなどのコーヒースタンドでも、自分のマグを持って行って入れてもらうと、ちょっとだけ割り引いてもらえますよね。それだけで元を取るのは結構大変そうですが、ありがたいサービスです。
コーヒーメーカーの稼働率が上がると、必然的に増えるのがフィルターの使用量。ECE-1000が我が家に届いたときには、まだ大量のペーパーフィルターの在庫があったんですが、夏場に大量に使ったせいか、11月中旬くらいで使い切りそうな雰囲気になってきました。普通なら、そろそろ買い足しておかなきゃ…となるわけですが、そんな素直な展開にならないのがSSK World(笑)。さて、いったいどうなったのか?が、今回のお話です。
ECE-1000の購入を決めたときから念頭にあったアイテムが「ゴールドフィルター」。その名の通り、プラスチック製の円錐形の枠に金色の細かい編み目が張られた製品です。もちろん、ただ金色をしているわけではなく、フィルター部は金属製のメッシュに純金のメッキが施されたホンモノのゴールドです。コーヒーメーカーの中にはこれを標準装備したものもありますが、ペーパーフィルターの代わりに後から追加できる製品も売られています。スイスのエルフォ社製のものが有名ですね。
ペーパーフィルターのように使い捨てずに、洗って何度も繰り返し使いますから、環境に優しい「エコロジー」という文脈で語られることもある製品なんですが、別にそれだけを目指しているわけではありません。ゴールドフィルターの価値の本質は、抽出されるコーヒーの質そのものにあります。
通常、コーヒーを抽出するためには紙やネル(布)で作られたフィルターが使われます。コーヒー豆の粉末の中を通り抜けてきた水が、さらにこれらのフィルターを通り抜けてポットなどに貯められるわけですが、このときにフィルターのにおいがコーヒーに移ったり、逆にコーヒーの成分がフィルターに吸着されたり…ということがどうしても起こってしまいます。一方、皆さんご存じの通り、金は金属の中でも他の物質との化学反応を最も起こしにくい物質の一つ。金をフィルターに使えば、妙な「足し算」も「引き算」もない、最も純粋なコーヒーを楽しむことができるはずです。実際に、コーヒーをテイスティングするプロたちはこれを使います。
実は、ゴールドフィルターへのこだわりは、もう5年以上前に遡ります。合唱団でベートーヴェンの「第九」を歌っていた頃、練習でピアノ伴奏をしていただいていたM先生と、コーヒー談義で盛り上がったことがありました。既に、我が家にはレギュラーコーヒーの豆しか置いていない状態でしたから、それなりの自負がありました。しかし、彼女に「うちではゴールドフィルターを使ってるわよ」と言われ、微妙な敗北感がずっと心の片隅に残っていたんです。いつかは我が家でもゴールドフィルターを…と思っていました。
ちなみに、純金を使った製品とはいえ、ゴールドフィルターはECE-1000などに使われる103(1×4)サイズのものなら4,000円程度で売られていて、とても手が出ない!というほどのモノでもありません。しかし、1枚あたり数円で売られているペーパーフィルターと比較して、元を取れるのはいつの日か…と考えると、つい遠い目になってしまうくらいのコストパフォーマンスの差はあります。
今日のタイトルを「キンでいれる」と読むか「カネでいれる」と読むのかは、皆さんに決めていただければ良いと思いますが、果たして相応のお金をかけてゴールドフィルターで淹れるコーヒーの「違い」が私には理解できるのか。ともかく、試してみました。
同じ水の量で、同じ種類の豆を同じ量使って、ペーパーフィルターとゴールドフィルターでホットコーヒーを淹れて飲んでみました。ただし、豆のひき方はゴールドフィルターの方がやや粗挽きになります。金属製のメッシュはかなり細かいとはいえ、紙の繊維と比べるとずいぶん荒いものですから、あまり細かくひいてしまうと、網目からコーヒーが抜けてしまいますからね。こればかりは道具の特性ですから仕方ありません。
出来上がったものは、並べてみるまでもなく全く違います。ゴールドフィルターで淹れたものの方が、明らかに香りも、味もより強いものになっています。水か豆の分量を間違えて、ちょっと濃く淹れすぎてしまったコーヒーとも、またひと味違います。特徴的なのは、コーヒーの表面に油のようなものが浮いていること。これは、コーヒーの旨味成分の一部が油脂分を含んでいて、これが浮いている証拠なのだそうです。ペーパーフィルターだと吸い取られてしまうのでしょう。
ゴールドフィルターで淹れたコーヒーをM先生が自慢するのが、ようやく理解できました。淹れるたびにフィルターを洗っておかなくてはならないのは少々手間が増えるわけですが、それだけ手をかける意味は十分にあると思います。「美味しくて、しかもエコ」ですからね。そのくらいは頑張らなくては。
油が浮いているのは、ひとつ間違えると「ちゃんと食器は洗ってるの?」と言われてしまいそうなんですが、このあたりはお客様にお出しするときには誤解のないようにちゃんと説明した方が良さそうです。見た目でもう一つ気になるのは、どうしても飲み終わった後にコーヒーの微粉末が底に残ることなんですが、これもフィルターの構造上は仕方のないところかも知れません。まあ、結果的に美味しく飲めたり、飲んでいただけたりすれば、多少の見てくれの問題はクリアできるはずですよね。
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