11日に発生した東北地方太平洋沖地震から、今日で10日目になります。この間、あまりにも様々なことが起こりすぎたせいか、「まだ10日しか経っていないのか?」というのが実感です。
既に確認された死者数は阪神・淡路大震災を超え、日本で戦後最大の被害を出した地震災害となっています。そして、様々な状況がまだ動き続けています。福島第一原子力発電所では、日本国内で発生した原発関連事故としては史上最悪の状況となっている中で、さらなる事態の悪化を食い止めるべく、緊迫した中で決死の作業が続けられています。昨日は、津波で壊滅的な被害を受けた宮城県気仙沼市で、地震後9日目にして救出された人がいたのだそうです。
昨日は最大震度5強となる余震も観測されました。また、直接の余震とは言えませんが、翌12日に長野で発生した地震や、15日夜に富士山麓で発生した地震も、今回との関連が「否定できない」と言われているようです。東京電力管内では、逼迫した電力需給状況の中で、地域ごとに割り振って数時間ごとに順番に停電を行う「計画停電」を初めて行っています。被災地以外でも、全国的に様々な物資が入手しにくい状況が続いています。影響は、実に広範囲にわたっています。
今回の「震災」(いろいろな表現を見かけますが、「東日本大震災」が定着しつつあるのでしょうか)を受けて、これまで行われてきたこと、これから行われる予定のことが、全国各地で次々に中止や延期を決定しています。実施そのものが不可能、あるいは非常に困難となり、やむを得ず決断されたものもありますし、何百年に一度かも知れない緊急事態と言われる中で、「そんなことをやっている場合じゃない」と取りやめられたものもあります。
一方で、あえて予定通りに実施しようとされるイベント等もあります。こちらは、「こんな状況だからこそ被災者の皆さんに勇気を与えたい」とか、「何でもかんでも中止しては日本経済が停滞しまう」とかの理由を挙げて行われるわけですが、中止や延期と比べると、誰もが納得できる理由とは言いがたく、だからこそ実施する側には確固たる信念を示すことが求められると思います。
スポーツや芸能などの、多くの観客を集めて開催されるイベントは、観客を運ぶ交通手段の問題、会場で使用される莫大な電力など、物理的に実施が困難な多くの問題を抱えます。先にも挙げた、人々を勇気づける効果も高いはずなのですが、最終的に中止や延期の方向の結論になるのは仕方ないところです。
3月と言えば、私にとっては「野球の始まるシーズン」のイメージも強いんですが、野球に関するイベントは、主催者によって対応がずいぶん違ってきています。特に、プロ野球は、被災地の仙台を本拠地にする球団もあるだけに、開幕を2週間後に控えた段階での被災に対し、どのように実施するのかが注目を集めました。
東北楽天ゴールデンイーグルスが所属するパ・リーグは、開幕を4月12日に延期することを決めました。一方のセ・リーグは、一度は当初予定通りの3月25日に開幕することを正式に発表しました。セ・リーグの方針に対して、各方面から批判が集中し、とりあえず3月29日への延期が発表はされましたが、このままでは話は収まらないような気もしています。
セ・リーグでは、特に読売ジャイアンツが予定通りの開幕を強く主張したと聞いています。あの渡辺恒雄氏が、「戦後だって3ヶ月でプロ野球は始まった」として、国民を勇気づけたい趣旨の発言をしています。いつもジャイアンツの利益を中心に考えているようにしか見えない人ですが、今回ばかりは心の底からの言葉のような気がしています。
しかし、このプランはそもそも実施面で相当の無茶だと言わざるを得ません。東京ドームでの試合開催は、一般家庭の1日分に換算すると5,000戸以上もの電力を消費するのだとか。また、5万人以上の観客(本当にそんなに集まるのかどうかはともかくとして)が球場との間を往復するため、多くのガソリンや電気が消費されることになります。ちなみに、ドーム球場では、デーゲームでもグラウンドへの照明が必要になるので、ナイターと比較して劇的に電力消費が減るわけではないようです。
考えれば考えるほど、セ・リーグの選択はいろいろな面でマイナスに働くような気がしてなりません。主催者である各球団幹部の皆さんも、既に自らに対するイメージダウンという大きな被害が生じているのを感じていらっしゃるのではないかと思います。慌てて決めた延期案もあまりにも中途半端です。もはや修復不可能な決定的ダメージかも知れません。
余談ですが、今回のセ・リーグに対する反発の強さは、ジャイアンツに対する様々な思いが形を変えて表れているような気もします。先頭に立って声を上げているのがナベツネ氏でなければ、私たちの受ける印象ももうちょっと違うものだったかも。
センバツ高校野球は、予定通りの日程での開催が決まっています。この日のために日々練習に励んできた高校球児たちのことを思うと、中止ではあまりにもかわいそうですし、学業と両立していかなくてはなりませんから、安易に延期という選択肢も採れません。
西日本の甲子園球場が会場であるため、基本的に昼間開催であることも考えれば、球場自体でのエネルギー消費に対する制約はプロ野球のときの話ほどではないはずですが、全国各地から人々が集まってくるわけですから、移動のためのエネルギー消費は非常に大きなものになります。ガソリンの入手難が続いている中で、かなり厳しい状況だと思います。
開催に当たり、開会式の入場行進を取りやめたり、ブラスバンドなどの鳴り物入りの応援を禁止したり…といった「簡素化策」が発表されています。ただ、被災地への募金を集める話や、試合進行を早めてナイターを回避する話はともかく、冒頭の二つはどんな効果があるのか疑問たっぷりです。喜ぶのは誰なんでしょうか。単なる主催者側のポーズのような気がしてなりません。
もともと、高校野球は妙な精神論が大手を振って歩いているのが嫌いではあります。プレーしている選手たちには罪はないのでしょうけど。
中止か、延期か、それとも強行か…という問題は、他にもいろいろあります。このまま話を続けると収拾が付かなくなってしまいそうなので、続きはまた回を改めて…ということにしましょう。
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