Everyone, Creator

オランジーナを飲みながらフランス生まれのオレンジ果汁入り炭酸飲料・オランジーナ。我が家では、すっかり定番の飲み物として定着しましたが、現在国内販売元のサントリーで「オランジーナ擬人化プロジェクト」なる企画が進行中です。

これは、その名の通りオランジーナをイメージして擬人化したイラストを募集するもの。優秀作品に選ばれると、イラストをオランジーナの缶にプリントしたデザイン缶を作ってもらえて、それが今夏のコミックマーケットの会場に展示されるほか、最優秀賞には賞金とオランジーナ1年分(いつも思うんですが、「1年分」ってどういう計算をしているんでしょうか?)など、豪華な賞品がもらえます。

さらには、応募作品の一部はフランスで開催されるジャパンエキスポにも展示され、ここで来場者投票により選ばれた「フランス賞」には、4泊6日のフランスアート旅行がプレゼントされます。何とも大がかりな企画です。


現在はまだイラストの応募受付期間中ですが、私たちは既に出品されたイラストたちをすべて見ることが出来ます。作品の応募には、会員がイラストを投稿、公開できる「イラストコミュニケーションサービス」・pixiv(ぴくしう゛)を使います。pixiv会員が「オランジーナ擬人化イラコン」というタグを付けてイラストを投稿すれば、応募は自動的に完了。私たちは、pixivにアクセスすれば、すべての投稿作品を見られるわけです。

今日(2013年6月30日)現在で、投稿された作品は2,000を大きく上回っています。同じ作家さんがいくつかの作品を投稿しているものもありますが、ちょっと見ていくだけでも、実にバリエーション豊かな作品が並んでいます。基本的には、「あの夏、僕はオランジーナに恋をした。」というコピーに沿って、フランス風味たっぷりの少女のイラストがたくさん投稿されています。あまり「萌え」要素が強すぎない、ちょっとオトナの雰囲気の作品も結構多く見られるのは、甘すぎないオランジーナの味わいを表現しているのでしょうか。

妻にもこのプロジェクトの話をしてみたら、pixivで投稿されているイラストたちを食い入るように見つめていました。彼女にはイラスト描きのお友達もいますから、知った名前が並んでいないかどうかが気になったようです。

ちなみに、このスタイルの企画は今回が初めてのことではなく、昨年にも「C.C.レモン擬人化イラストコンテスト」なるものが開催されています。こちらも、7000件以上の作品をpixivで閲覧することが出来るようになっています。なかなか大盛況だったようです。


今回の企画に限らず、近年は、インターネットの普及に伴って個人が自作の「作品」を世に公開するための敷居が大幅に下がっているのを日々感じます。先ほどのpixivもそうですが、写真も、動画も、多くの個人からの投稿を受け付けて全世界に流しているサービスがいくつも存在します。もちろん、それらのサービスに載せるためのコンテンツを作成するツールも、普通に巷に出回っているパソコンで軽々とハンドリングできるようになり、制作するための敷居も劇的に下がりました。

こんな世界を端的に言い表したキーワードとして、私がしばしば思い起こすのが「Everyone, Creator(誰もが、創造者)」。Google社がバーチャルシンガー・初音ミクをフィーチャーして制作した、Webブラウザ・ChromeのCMで使われていたコピーです。

「彼女」は、自作の歌を公開したい!と思っていたアマチュア・クリエイターたちにとって、おそらく最大の障壁だった「歌ってもらえる歌手を探す」という作業を、1万数千円のソフトウェアへの出費とパラメーターを編集する根性さえあれば、今までより遙かに容易に克服できる、画期的な存在です。彼女たちのおかげで形になった楽曲に、今度は本当に歌ってくれる歌手が現れたり、CGでプロモーションビデオが作られたり…と、連鎖反応的にクリエイターたちのつながりが生まれています。

私の過去の記事を見ていただければ、自作の楽曲を公開していたことはおわかりかと思いますが、今でも悔しく思っているのが、初音ミクが登場した当時に、ちょうど趣味に投資するのが難しい状況になってしまい、ムーブメントに完全に乗り遅れてしまったこと。おそらく、彼女の登場があと2年くらい早ければ、私は積極的に首を突っ込んで、流れに乗ろうともがいていたはずです。結果的にそこに乗れたかどうかは、今となってはifの話にしかならないわけですが。


多くの人たちが作品作りというプロセスを体験できるようになった「Everyone, Creator」の時代ですが、体験してみると実感できるのが、「プロにはやっぱりかなわないんだなぁ」ということ。そう思っているのは私だけで、優秀な皆さんはそうではないのかも知れませんが、プロのアーティストが使っているのとほぼ同じ機材を使い、大量の時間を投入して編集しても、やっぱり何かが明らかに足りないのが自覚できます。

私は音楽については20年以上勉強してきたつもりですから、少なくとも知識面でそれほど足りないことはないはずだという自負があります。それでも追い越せないのは、持って生まれた才能とか、センスとかいう部分なのかも知れませんし、だからこそプロはスゴい!と思えるわけです。その差を感じた上で、制作、あるいはパフォーマンスという行為をどう受け止めていけばよいのかが、「Everyone, Creator」時代の楽しみ方の肝になるような気がします。

本質的に、表現することは楽しいことなんですよね。もちろんやるからには上手になりたい訳なんですが、本質的には、上手か下手かという尺度では判定できないところにその価値があるのだと思います。

私が、こんな年齢になってからドラムなんかを習い始めたのも、とにかく楽しく演奏したかった…ということがあります。習い始めてから1年が経って、その欲求は十分満たされていると感じます。これからも、いろいろな曲を、楽しく演奏していきたいですね。今後は、まだ実現していない、他の楽器とのセッションにもチャレンジしてみたいものです。


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