木曜日・10月2日に発表された、新しいレッツノート・CF-RZ4。先日はやや興奮気味に「Rの復活」を語ってしまいましたが、単なるノスタルジーだけで片付けてしまうには、CF-RZ4にはあまりにも語るべき部分が多すぎます。ちょっと深呼吸でもしながら、改めてまとめていきましょう。
CF-RZ4を語る上で絶対外してはいけない要素が、Intel社製の最新CPU、Core M(こあ・えむ)を採用したこと。コードネームでは「Broadwell-Y」と呼ばれていたCPUで、14nm(ナノメートル)プロセスルールという最先端の製造技術で作られた初めての製品です。特に低消費電力に注力した設計となっていて、従来のCore iシリーズの省電力版と比較しても、より小さな電力で高いパフォーマンスを発揮するのだそうです。
4.5Wという低い熱設計電力(TDP)で、厚さ1cm未満の薄型タブレットも冷却ファンなしで作れてしまう…というのが売り文句。実際に、Intel社自身もリファレンスデザインとして薄型タブレットとキーボードが「合体」するスタイルの2in1を提示していますし、同様のコンセプトで作られた製品を実際に発売することを予告しているメーカーもいくつかあります。
しかし、発売日が明確に示された製品はおそらくCF-RZ4が世界初。そして、市場に出てくるのもどうやら一番乗りになりそうです。「出すよ、出すよ」だけなら誰にでも言えるわけで、いち早く実際に発売できるだけのモノに仕上げてきた技術力には敬服します。
CF-RZ4の店頭販売モデルに採用されているCore M-5Y10は、デュアルコア・4スレッド動作で通常時の動作周波数は0.8GHz、Turbo Boostで最大2.0GHzまでのクロックアップ動作が行われる…という仕様になっています。グラフィックスコアの方はかなり拡張されているようですが、それでもスペック表の数字を見る限りでは従来製品と比べるとかなり見劣りするように見えます。
しかし、実際に走らせてみると、これが意外に頑張るようです。ニュースサイトの中には、既にCF-RZ4をベンチマークテストに供しているところもちらほら出てきましたが、結果を見てみると、Core i5-4200U(2コア4スレッド、1.6-2.6GHz)採用機あたりと結構いい勝負をしています。常に最高速で連続してぶん回す…という傾向のテストではさすがに厳しい部分もあるようですが、項目によってはCore i5-4200Uを上回る結果も出ているようです。これまでタブレットに採用されてきたAtom Z3000番台とは格が違います。
これには、CF-RZ4が、ファンレス設計も可能なはずのCore Mで、あえてヒートパイプと冷却ファンを使い、本格的な冷却システムを構築しているところも効いていそうです。Turbo Boostによるクロックアップも、温度が安全に動作できる範囲に収まっていることが前提。発熱を抑え、Turbo Boostしていられる時間を長く取れれば、同じCore M採用機でもファンレスのタブレットよりはCF-RZ4の方が高性能を発揮できるはずです。今後数多く登場するであろうファンレス設計のCore M搭載機で、同様の結果が出るとは限らなさそうです。
そのCore M採用が、CF-RZ4の最大の特徴である745gの軽量ボディに大きく寄与しています。CF-RZ4の特設サイトでは、個々の部品レベルでの血のにじむような軽量化について語られていますが、実は軽量化にいちばん効いているのは、バッテリーをAXシリーズの6セル(内蔵2セル+着脱式4セル)から4セルに減らせたこと。それでバッテリーライフはほとんど変わらず、快適なパフォーマンスも確保している…というのですから驚異的です。
745gの「世界最軽量」(LTE内蔵モデルは770g)とは言いますが、これがどれだけスゴいことなのかを、ライバルたちの重量と比べてみましょう。とはいっても、完全に同クラスで競合する相手が見つからないんですが、例えば11.6型画面でCore iシリーズを搭載していたタブレット・VAIO Tap 11は、キーボードを持たない本体部分だけで780gと、既にCF-RZ4の重量を上回っています。付属のキーボードを含めれば1.1kgあります。同じくキーボードを持たないMicrosoft社謹製の12型タブレット・Surface Pro 3は800g。どちらも、まる一日のバッテリーでの運用は相当苦しいはずです。
VAIO Tap 11と同じ11.6型画面でオーソドックスなクラムシェル型のノート・VAIO Pro 11は、タッチパネルなし仕様、JEITA 1.0基準で10時間動作(CF-RZ4はJEITA 1.0基準では約14時間)のバッテリー内蔵で770g。これでもノートPCとしては驚異的な軽さですが、バッテリーライフやインターフェースの拡張性など、2in1であることの他にもより軽いCF-RZ4の方が上回っている…というポイントがいろいろあります。
同じ10.1型、1920×1200ドットの画面を持つAtom採用のWindows 8タブレット・ThinkPad 10の重量は約600g。おそらく、同じ筐体にCore Mを使ったシステムを収めることは可能ではないかと思います。しかし、純正オプションの「ThinkPad 10 ウルトラブック・キーボード」は重さが535gもあって、組み合わせるとやっぱり1kgを超えてきます。このキーボードは、キーボード面の奥にあるスリットにThinkPad 10を立てかけられる仕組みになっていますが、600gの板を立てかけて安定させるには、どうしても相応の重さが必要になります。
画面部分が分離してタブレットとして動作するタイプの2in1も、どうしてもThinkPad 10同様の問題を抱えることになり、タブレット部分のみではかなり軽量に仕上がっているものの、キーボード付きの状態では通常のクラムシェル型ノートより重くなってしまいます。重さを稼ぐために(もちろん、表向きには「合体時のパフォーマンスを確保するため」…なんですが)キーボード側に大容量バッテリーや拡張用のストレージを入れている製品もあるようですが、その構成が必然なのか?と考えると、やはりこじつけ的なものを感じてしまいます。
先日は「タブレットとキーボードを一緒に持ち歩く人全てにとって検討に値する選択肢」という表現をしたわけですが、それどころか、パナソニックが採用した「360度回転液晶スタイル」こそが、「キーボードもモバイルする2in1」としては最も合理的な最適解なのかも知れません。もちろん、「キーボードはモバイルしない2in1」としては、分離/合体型はアリなんですけどね。
CF-RZ4のような製品が、Core M搭載機の先陣を切って登場してしまうのでは、後から出てくる各社の製品はかなり大変でしょうね。インパクトであれを上回るのは容易ではありません。活路があるとすれば、20年近く積み上げてきたレッツノートの思想の向こうを張れるだけの確固たるコンセプトを打ち出すか、あるいは価格勝負に出るか…でしょうか。
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