木曜日・22日の未明(日本時間)に、Microsoft社がWindows 10に関する発表会を開催しました。コードネーム「Threshold(すれっしょるど)」と呼ばれていた次期Windowsの正式名称が「Windows 10」になると発表されたのは昨年の秋のこと。Windows 8.1から、数字が「9」を通り過ぎて一足飛びに「10」に進む…という、誰もが想像しなかった意外な展開に巷が騒然としたのは、まだ記憶に新しいところです。
10月には、このWindows 10がどんな姿になるかを「チョイ見せ」する「Technical Preview」版が公開され、私も自作デスクトップ上に仮想マシンを構築してインストールしてみました。どうも今ひとつ動作は安定していなかったんですが、次のWindowsはこんな風にしたいのかな?という雰囲気は、何となくわかったような気がします。Windows 8.xでちょっと大胆に変えすぎてしまったところを見直して、インターフェースの考え方を整理しようとしているようです。とはいえ、Windows 8.1のデスクトップにスタートメニューとその他少々のおまけを付加しただけ…という風にも見えましたが。
秋のプレビュー版は、Windows 8に乗り換えずにWindows 7を使い続けている、主に企業でPCを扱う方々に対して、Windows 10ならWindows 7のデスクトップ環境の使い勝手はそのままに、今までのソフトウェアもちゃんと使えて、さらに便利なWindowsが使えるようになるんだ!ということをアピールするのが目的だったようです。しかし、それだけでは単にWindows 7に先祖返りしたのと大差ありません。特に個人ユーザー向けには、Windows 10のどこが新しいのか、Windows 7から乗り換えるに足るだけの魅力があるのかをアピールしなくてはなりません。
「Consumer Preview」(消費者向けプレビュー)だ…と言われていた今回の発表で、どんな話が出てくるのか。仕事だけではなく趣味でもWindows環境が欠かせない私ですから、非常に楽しみにしていました。
今回の発表では、いろいろと気になる新情報が公開されました。といっても、Windows 10そのもののユーザーインターフェースや機能については、あまり驚きはありませんでした。
Windows Phoneに搭載されていた、文字入力だけでなく音声認識にも応える「デジタルパーソナルアシスタント」・Cortana(こるたな)がWindows 10にも導入されるそうですが、どうひいき目に見ても、iOSのSiriやAndroidのGoogle Now、さらにはiコンシェルのひつじのしつじくんなどなど、数々の類似した先例を思い出してしまいます。Windows 8で画面を右端からスワイプすると出てくる「チャーム」は、通知やデバイス設定などを集中操作できる「アクションセンター」にリニューアルしましたが、これもiOSやAndroidの同様の機能とよく似ています。よく研究した、といえばその通りなのかも知れませんが…。
私がちょっと気になったのは、「Continuum(こんてぃにゅあむ;「連続」の意味)」という名前で紹介された、デスクトップ向けとタブレット向けのユーザーインターフェースを行ったり来たりする機能。2in1端末のキーボードを外すと、画面隅に通知ダイアログが出て、ワンアクションでタブレット向けの全画面表示中心のインターフェースに変わります。キーボードを取り付けると、Windows伝統のデスクトップ画面に戻ります。一見、私も含め2in1のユーザーには便利そうですが、自動的にガラリと変えられてしまうのは、もしかすると混乱の元になるかも知れません。
Windows自体の中身よりも面白かったのが、Windows 10と共にデビューするであろうデバイスの紹介。頭に被ってホログラムの立体映像を操作する「HoloLens」と、84型画面の超巨大タブレットで、ホワイトボードのように使う「Surface Hub」がお披露目されました。特にHoloLensには、従来のWindowsデバイスのイメージを軽く飛び越えていくインパクトがあります。
この日はスマートフォンでのデモも行われましたが、これら全てが同じWindows 10で動いている…というのが、実はいちばんとんでもないポイント。最近はOneDriveやOneNoteなど「One」をキーワードにサービスを展開してきたMicrosoft社ですが、これは「One Windows」構想の具現化といえます。
同じOSで動いていると言うことは、アプリも基本的に同じものを使えることになります(デバイスの形によるアプリ側の対応は必要そうですが)。ウマくマーケティングが当たれば、小さいデバイスの世界ではApple社やGoogle社にこてんぱんに叩きのめされているMicrosoft社の、起死回生の一打になるかも知れません。しかし、さすがにOSの名称を「Windows One」や「OneOS」にするまで思い切ることはできなかったようですね(笑)。
私にとって最も興味深かったのは、Windows 10の私たちへの配られ方が、今までとは劇的に変わるという発表でした。Windows 10では、その発売から1年間は、Windows 7以降のWindowsから無償でアップグレードできるようにするのだそうです。今までにない太っ腹の対応ですね。でも期限を切るようではまだまだだな…と感じたわけですが、これはMicrosoftの都合というよりも、PCを販売する各メーカーがアップグレードをサポートするための負担を考慮してのことのようです。
このキャンペーンがウマく行けば、巷で使われているWindowsは、そのほぼ全てがWindows 10になります。そして、Windows 10はメジャーバージョンアップでなくても随時新しい機能を取り込んで進化し続け、これからは誰もが常に最新のWindowsを使うことになるのだそうです。今回の発表会の中では、「Windows as a Service(サービスとしてのWindows)」という表現が使われました。クラウド上からサービスを提供する形態を表す「Software as a Service(サービスとしてのソフトウェア;SaaSという略称の方が有名ですね)」などの用語をもじった表現ですが、Windows 10はほぼそれに近い状況を生むことになります。
もしそれが実現すれば、ユーザーも、ソフトウェアやサービス等の開発者も、Windowsのバージョンの差を考える必要がなくなります。これもまたひとつの「One Windows」世界ですね。もしかすると、Microsoft社は、Windows 10への移行がうまく行った暁には、もうメジャーバージョンアップは行わないつもりかも知れません。
しかし、この構想が実現するかどうかは、既存のWindows 7/8.1ユーザーがすんなりとWindows 10に乗り換えてくれるかどうかにかかっています。そのために、無償アップグレードの他にどんな手を打ってくるのかは気になるところです。新バージョンの普及が全く進まず、旧バージョンが売れ続ける…という、Windows XPやWindows 7の歴史を繰り返したくないでしょうからね。もしかすると「Windows 7/8.1のサポート早期打ち切り」という暴挙に出るのでは?と、職場ではWindows 7パソコンの管理をさせられている私はちょっと心配しています。
今回紹介された数々の新機能が搭載されている、Windows 10の新しいプレビュー版プログラムは、「来週には入手できる」とアナウンスされました。しかし、実際には土曜日・24日の午前中には公開が始まり、「Windows Insider Program」にMicrosoftアカウントで登録さえすれば、基本的には誰でもダウンロードすることができます。
昨秋のプレビュー版では、英語(米国、英国)、中国語、ポルトガル語しか用意されていませんでしたが、今回は25カ国語版が用意されました。もちろん、日本語版もちゃんとあります。昨秋の時点では「何故この言語が選ばれたんだろう?」と思ったんですが、冷静に考えてみれば想定ユーザーが多い順に選ばれているだけなんですよね。ポルトガル語はポルトガルだけでなく、2億人近い国民を擁するブラジル向け…というわけです。
自作デスクトップ機にインストールしてあった英語版のプレビュー版はWindows Updateで更新できるそうですが、更新しても英語版のままになる…ということで、改めて仮想マシンを作成し直して、日本語版をクリーンインストールしました。
Cortanaについては、「Cortana is not available in your market.(コルタナはあなたの国では使えません)」と表示されてしまい使えません。他にも、まだ英語メッセージのままになっている部分が結構残っています。それでも、新しいインターフェースのいろいろな動作は確認できます。Windows 8.1 Updateの段階でも、PCの設定はModern UIの「PC設定の変更」とデスクトップの「コントロールパネル」でちぐはぐになっていましたが、ようやく整理できてきたようです。
右下に表示されるOS名が「Windows 10 Pro Technical Preview」になったのもポイント。昨秋のまだ「10」を名乗っていなかったプレビュー版から開発が進行し、ようやく「Windows 10」らしさが整ってきたと言うことなのかも知れません。
今回のプレビュー版は、デスクトップ機の仮想環境だけでなく、レッツノート・CF-RZ4にもインストールしてみようかと考えています。2in1機であるCF-RZ4なら、Windows 10の特徴的な機能の一つであるContinuumの動きを体感することができるはずです。
昔から、プレビュー版のWindowsをレッツノートに放り込むことは何度か試してみているところですが、Windowsの新機能が体験できる代わりに、レッツノートとしての重要な魅力がスポイルされてしまう部分もかなりありましたし、酷いときには基本的な機能が使えなくなってしまったこともありました。しかし、今回はほとんど問題は起きないのではないかな?と思っています。単に楽観視しているわけでは無く、根拠もちゃんとあるんですが…詳しくは、また実際にインストールするときにでもご紹介しましょう。
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