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BS 4Kは細かいだけじゃない

今年のNHKの大河ドラマ「麒麟がくる」は、 諸般の事情で放送開始が少し遅れることになったわけですが、 先週の日曜日・1月19日から放送が始まっています。戦国時代の武将たちの中では悪役のイメージがすっかり根付いている明智光秀を、あえて主役に据える…というこの作品。どんな展開になるのか興味津々で、とりあえず見てみようとは思っていました。

実は、明智光秀という人物は前半生についてはほとんどわかっていないのだそうで、第1話は彼の青年時代からのスタート。演じるのも最初から長谷川博己です。まだ見てないぞ!という方(1週間経つのでもうそれ程いらっしゃらないでしょうけど)のために、ネタバレはしないように気をつけますが、話の流れに引き込まれて、初回拡大版の1時間15分はあっという間に過ぎました。今後が楽しみです。

しかし、観ていて気になったのが画の作り。というよりも、どうも色と明るさのバランスが変です。衣服の色が全体的に鮮やかなのは、時代考証を踏まえた上であえてこのようにした…ということだそうで、それ自体は問題だとは思わないのですが、それにしてもあまりにも原色に近すぎて、まるで蛍光色のような場面もありました。それだけでなく、屋外の場面では、植物の緑もこれまた蛍光色のような派手な緑色。さすがにここまでやると非現実的です。

そして、屋外でもうひとつ気になったのは、逆光のカメラワークで画面が白飛びしまくっていること。しかも、それが第1話では結構頻繁に出てきました。我が家で妻と一緒に観た感想は、「話は面白かったけれど目が疲れる」というもの。大河ドラマでは、以前「 画作りが暗すぎる」としてクレームが出たこともあったそうですが、今回もちょっと物議を醸すかも?と感じました。


ネット界隈でも、早速この画の作りについてはいろいろと意見が飛び交っていましたが、中で見かけたのは「4Kで見るとマトモ」「4Kはキレイ」というもの。私は「大河ドラマ」と言えばこの枠!という地上波・NHK総合の午後8時からで視聴したわけですが、地上波やBSプレミアムで視聴した方々は、やはり私と同じ感想を持ったようです。「まるでアニメのような色」というのは、なかなか言い得て妙と感じました。

BS 4K放送は、単に画面解像度がハイビジョンの二倍に上がっただけでなく、そこに載せられる映像の明るさと色にも、これまでの放送とは大きな違いがあります。明るさについては、これまでの映像よりも明るさの差を幅広く表現できる、いわゆるHDR(High Dynamic Range)化が行われています。明るい部分も、暗い部分も、人間が目で見るのにより近い自然な表現ができるようになりました。

色度図上で示したハイビジョン(Rec.709)とBS 4K(Rec.2020)の色域
ColorAC Version 0.782で作成 (http://phonon-spectrum.com/)

そして、色については、ハイビジョン時代よりもかなり多くの色を表現できるようになりました。「4K放送 色域」で画像をググってみると、アルファベットのDを横倒しにしたような形のカラフルな図形の中に三角形が描かれたグラフがいくつもヒットするはずです。これは「色度図」と呼ばれる図で、このD型が人間が目で認識できる色全体の範囲、三角形が様々な映像が規格として表現できる色の範囲です。Rec.2020(放送規格としてのBT.2020という表記もよく見かけます)と呼ばれる4K放送の色域は、ハイビジョン放送のRec.709よりもはるかに大きな三角形で描かれています。

「麒麟がくる」は、全編新しい4K放送のためのカメラで撮影されています。当然新しい色域に則った上で、HDR対応の明るさ情報も記録しているはずです。それを何とかして従来のハイビジョン規格の中に収めようとすると、結果的に不自然な画になってしまう可能性は、十分ある…ということになります。


せっかくBS 4K放送の実力を体感できるテレビを持っているのに、BS 4Kで放送があることなどすっかり失念していて、先週の間には第1話を4K映像で見ることができなかった私。今日(1/26)は朝8時からNHK BS 4Kで第1話の再放送があったので、本当に4Kはマトモでキレイなのか確認してみることにしました。

屋外のシーンの自然の緑、登場人物たちの衣服などは、かなり鮮やかな色合いであることは確かなのですが、地上波で観たときのような「どぎつさ」はなく、自然な範囲にしっかり収まっています。そして、逆光のシーンでも、影になる部分までしっかりと描かれていて、「白飛び」は微塵も感じません。

逆に、夜のシーンでも暗い部分が潰れることはなく、しっかりと認識することができます。もちろん4K解像度で細かいところまでしっかりと描かれていますし、これはもうマトモを超えて「キレイな画」と言って良いでしょう。これまでも、4K映像の美しさは確認してきたつもりだったのですが、こうして実際に同じ番組を従来の2K放送と見比べると、その差がハッキリしてきます。

もちろん、画そのものの潜在能力の差をきちんと表現できる、テレビ側の性能も大事になるでしょう。BRAVIA KJ-55X9500Gの直下型LED部分駆動は、特にHDRの表現に大きく貢献しているはずです。 何しろ、番組のスタートに、白地に黒で「大河ドラマ」と文字が表示されたところからして、まず白の明るさが違いましたからね。


そう思って改めて番組全体を見てみると、明るい屋外のシーンで逆光のカメラワークが多用されているのも、夜の町で映画のように思いっきり明るさが落とされているのも、衣装の色合いがこれまでになく鮮やかなのも、すべてBS 4K放送のアピールポイントを強調するためのように見えてきます。地上波でのちぐはぐさを感じる画までもが、「BS 4Kを観てほしい」というメッセージに思えてきます。NHKを代表するドラマ枠である大河ドラマが、BS 4Kのショーケースになるのは当然の流れではありますが、それにしても、やることがかなり露骨だなぁ(苦笑)。

勢いに乗って、BS 4Kで続けて放送された第2話も観てしまいました。もちろん、ネタバレはなし!で行きましょう。「麒麟がくる」は、当面は日曜日の楽しみになりそうです。ただ、全部4Kでブルーレイレコーダーに録画してしまうと、NASには4K画質で転送できないので内蔵ハードディスクを圧迫してしまうのが悩みどころですね。


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コメント

“BS 4Kは細かいだけじゃない” への1件のコメント

  1. sskworldのアバター
    sskworld

    KJ-55X9500Gのクイック設定から画質モードを「シネマ」に切り替えると、地上波の放送でも、落ちついた色合いで見ることができます。光の表現は、やっぱりHDRが利いているBS 4Kにはかないませんが。

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