Windows 10が登場したときに、Microsoft入魂の新WebブラウザーとしてデビューしたMicrosoft Edge。一度は業界標準を勝ち取ったInternet Explorerの流れを汲む独自開発ブラウザーであり、HTMLを忠実に、そして高速に表示する「モダンブラウザー」として、Google Chromeの牙城を崩そうと奮闘していました。
決して出来が悪かったわけではなかったと思うのですが、PCとモバイル(Androidの標準ブラウザーですからね)双方のトップを押さえていたChromeに対して、決定的な性能面の優位を示せず、シェアは全然伸ばせていませんでした。振り返ってみると、最初があまりにもポンコツすぎたのが良くなかったかも知れません。その後機能は少しずつ整っていきましたが、「作りかけの出来損ない」のイメージは払拭できていませんでした。
このままではEdgeには未来がない…と感じたのでしょう。2018年に、Microsoft社はEdgeブラウザーの独自開発を終了することを明らかにしました。しかし、それは単にWebブラウザーの提供自体を終了するという意味ではありませんでした。
今後のEdgeは、オープンソースプロジェクトのWebブラウザー「Chromium(くろみあむ)」をベースにして開発、提供されます。Chromiumは、その名前からも想像できるとおり、Google ChromeのベースにもなっているWebブラウザー。つまり、新しいEdgeはChromeの「兄弟ブラウザー」といえる位置づけになります。
2019年の間に開発が進められてきたChromium版のEdge(以後「新Edge」とします)は、今年の年明けから正式版が利用できるようになりました。ただし、日本では、新Edge(Chromeも同様なのですが)が確定申告に使われるe-Taxと互換性がない…ということで、自動更新は4月以降に先送りの予定になっていました。しかし、新型コロナウイルス対策で、確定申告の期限の方が先送りになってしまいましたし…実施はいつになることやら。
とはいえ、実際には日本でも(というより日本語環境でも)新Edgeの導入自体は可能です。私の手元には複数台のPCがありますから、試しにどれか1台にインストールしてみる…ということができます。まずは、レッツノート・CF-SV8に入れてみることにしました。
新Edgeは、Edgeのサポートページ経由で、明示的に手動で直接ダウンロードしてインストールすることが可能です。インストールすると、旧Edgeから新Edgeに置き換えられる形になります。
Webページの表示を比べて見ると全く同じ。HTMLやCSS、JavaScriptを解釈する部分に同じものを使っているのですから、当然ではあります。WordPressの管理画面も、Chromeと全く同じように動きます。
しかし、それ以外のユーザーインターフェースの部分は、むしろこれまでの旧Edgeのものを踏襲しています。タイトルバー部分はよく見ると結構違いますし、メニューの並びを見れば一目瞭然です。
違いは見た目だけではありません。拡張機能は、従来のEdge用、Chrome用のどちらも追加できるように作られているそうです。また、企業の業務システムなどに残っている「Internet Explorerでなくては困る」ページを扱える「IEモード」も仕込まれています。「兄弟」とはいえ、中身はかなり違います。
もちろん、単にChromeのコピーを作って出すだけでは意味がありません。基本部分は業界標準となったChromiumを活用して堅実に提供した上で、これまでMicrosoftと歩んできた多くのユーザーに求められている機能も、しっかりと用意した…ということでしょう。
新EdgeでもChromeと全く同じようにWebページが見られるのなら、Chromeはインストールしておかなくても新Edgeだけで用が足りるのでは?というのが、先にCF-SV8にインストールした狙いでした。アプリが削除できれば、貴重なSSDの容量も節約できます。
とはいえ、そう簡単には問屋が卸しません。確かに表示は問題なさそうなのですが、問題は設定を複数台の環境と同期させるときです。
新Edgeでも、旧Edge同様にMicrosoftアカウントを紐付けることで、設定が同期されます。一方、Chromeが設定の同期に使うのは、もちろんGoogleアカウント。これは、閲覧履歴やパスワードなども含めた諸々の設定が、単に複数台のパソコン間で共有できるだけでなく、Androidスマートフォンともシームレスにつながり利用できることになります。パソコン側のメインブラウザーを新Edgeに置き換えてしまうと、ここが分断されてしまうことになり、使い勝手の面では大きなマイナスになります。
スマートフォン側にEdgeブラウザーをインストールする(Android版もiOS版もありますからね)ことで、同様の使い勝手は実現できるのですが、パソコンよりもリソースが逼迫しやすいスマートフォン側に追加のアプリを入れなくてはならないのはツラいところ。Web体験の水準が同じなら…というより、同じになってしまったからこそ、あえてEdgeに乗り換えなくてはならない積極的な動機は見当たりません。
今回のEdgeの設定変更は、私たちにとってのメリットというよりも、Microsoft社にとってWebブラウザー開発に割くリソースが節約できることが最大のポイントかも知れません。余力をWindows 10やクラウドサービスなどの品質向上に役立ててくれるのなら、結果的に私たちにも得になります。
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