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レッツノート以外の何か・2023 (3)

今年で購入から5年目を迎えるレッツノート・CF-SV8については、内蔵SSDを交換したり、設定をリセットしたりして、少しでも長く快適に使えるように延命措置を施しているところですが、一方では次に乗り換える新しいモバイルノートPCをどうするか?も常に考えています。正直なところかなり難しい選択を迫られていますが、先日、非常に気になる新製品の発表がありました。

7月18日に、Dynabook株式会社(以下「ダイナブック」)が企業向けの新製品としてdynabook X83を発表しました。最大のアピールポイントになっていたのが、ユーザーが自分で交換可能なバッテリー。最近の同社製品では珍しく、「CHANGER(ちぇんじゃー)」というニックネームを押し出しています。単にバッテリーが交換できるからではなく、ゲームチェンジャーになるようなビジネスパーソンをサポートしたい!との想いを込めたネーミングだとか。

レッツノート・CF-SV8はレバー操作ひとつでバッテリーを着脱可

ユーザーが交換できるバッテリーといえば、レッツノートのアイデンティティーの一つではありますが、dynabook X83の場合はレッツノートのバッテリーのようにレバー操作一つで取り外せるわけではなく、ドライバーで裏蓋を開いて交換する構造です。レッツノートのように「ACアダプターをつないでおいて、起動したままバッテリーを交換して稼働させ続ける」というのはとても無理でしょう。それでも、劣化してきたバッテリーを交換するために工場送りにしなくてはならず、何日間も使えなくなるような事態を避けることはできそうです。

こうした構造を採用すると、大幅な重量増が避けられないところですが、軽量のSバッテリーのモデルで800 g、大容量のLバッテリーモデルで950 g(いずれも今のところ目標値)という軽さを維持しています。一方で、米軍調達規格・MIL-STD-810H準拠の耐久性能も10項目をクリアする予定だそうです。どちらもまだ予定ではありますが、発売前に公表するからには、達成する目途は立っているのでしょう。

13.3 型で16:10比率の画面サイズは、14型の「大画面モバイル」勢よりはひとまわり小さいものの、12.5型のレッツノートSR/QRシリーズよりは大きく、ちょうど良い見やすさが期待できます。幅298.8 mm×奥行212.0 mmという、A4用紙からちょっとはみ出る程度に収まるフットプリントのサイズ感も、どこでも持ち歩いて使うにはイイ感じです。

PCとしての基本性能については、最高で14コアのIntel Core i7-1370P、RAMも32 GBを搭載可能。サイズが異なるデュアルファンを配した冷却機構にも気合いが感じられ、小型軽量ながら相当のハイパフォーマンス志向になっています。こういうの、結構好きです。


先にも触れたとおり、「バッテリー交換可能」といえばこれまでレッツノートがアピールしてきたポイントのひとつですが、他にも、dynabook X83で新採用されている仕様の中には、レッツノートには既に採用されているモノがあります。

CF-SV8のダストカバーを開けてみる。奥に冷却フィンが

例えば、底面にある小さなふたを外すと、冷却フィン周りのホコリを吸い出して掃除できる「ダスト・クリーニング機構」(ダイナブック)もそのひとつ。レッツノートにも、同様の機能を持つ「ダストカバー」がずいぶん前から装備されています。

また、dynabook X83の製品発表会では、有線LANポートの向きが使用時に「爪が上に来るようになっている」ことが紹介されています。これが下向きになっていると「セーターを引っ掛けてしまう」という声があったからだそうです。最初は何のことを言っているのかよくわからなかったのですが、爪が下向きになる形だと、折りたたんで持ち運ぶ際に爪が引っかかる部分の尖った金属が筐体の外縁に来ることになり、セーターの裾や袖などが引っかかってほつれてしまう…という意味でしょうか。

CF-SV8の有線LANポート。爪が上に来る方向

これについても、レッツノートではずいぶん前から爪が上向きになる仕様でした。引っかかる云々以前に、この方がLANケーブルは挿しやすいと思います。筐体の厚みに余裕があるから、配置に自由度が高い…ということもありそうです。

別にdynabookがレッツノートの真似をしたということではなく、ユーザーの声を聴きながら設計を検討していったら、似たような造りになったのでしょう。良いモノは良い…で良いのだと思います。


dynabook X83のSバッテリーモデルとLバッテリーモデルでは、いくつか仕様の差があります。前者はCPUが第13世代CoreプロセッサーのUシリーズで、後者はより消費電力が大きいPシリーズも選択できます。また、前者はThunderbolt 4が2ポート、後者は3ポートという差もあります。

この仕様差は、FMV LIFEBOOK UHの現行モデルのラインナップと非常によく似ています。バッテリーサイズによって冷却ファンの個数が違うところまで含めて、実にそっくりです。もちろん、バッテリーが小さくても最低限の動作時間を確保するために、ちょっとスペックを抑えている…というのは、両者とも同じ事情なのでしょう。

ただ、世界最軽量モデルとなるFMV LIFEBOOK UH-X/H1ではThunderbolt 4非対応のUSB 3.2のみになってしまうのと比べると、軽量モデルでもThunderbolt 4が使えることはX83の優位点になりそうです。富士通ほど「世界最軽量」にこだわるモチベーションがなかった分だけ、機能を盛り込む側に舵を切れたのかも知れません。


dynabook X83を発表した際のダイナブックのプレスリリースを見ると、冒頭にこんな記述があります。↓

当社は、据え置き型のPCしか存在しなかった1985年に世界初のラップトップPCを発売し、さらに1989年には常に携帯できる世界初のノートPC「DynaBook J-3100 SS001」を発売することで、「さまざまな場所でPCを気軽に使いたい」というお客様のご要望にお応えしてきました。以来、お客様のニーズや課題を反映し、やりたいことをサポートしてエンパワーするPCの開発を心がけ、「高いモビリティ性能」「高い処理性能」「高い製品品質」を実現したPCを提供し続けてきました。

2023年7月18日新発売ニュース(法人向け) | dynabook(ダイナブック公式) https://dynabook.com/press-release/20230718.html

私のようなPCヲタクにとっては、この会社が世界初のノートPCを生み出した東芝のPC部門を引き継いだ老舗であることは常識です。とはいえ、別にこの枕詞はプレスリリースに毎回登場するわけではなく、それだけダイナブックがX83という「プレミアムモバイル」モデルに気合いを入れて取り組んだからこその表現なのでしょう。

世界初を生み出した私たちが、最高のモノを生み出そう!という矜持が伝わってきます。その後ライバルたちが数多く生まれ、あるいは消えていく中で、他社製品の良いところも採り入れながら、日々製品を磨いているのでしょうね。


実は、私がdynabook X83の発表に関して受けた最大の衝撃は別のところにあります。それは、複数のメディアが報じている「実売価格は15万円前後から30万円以下の見込み」という数字。Core i7-1370Pやタッチパネル付き液晶、LTEの通信モジュールまで搭載できる仕様の製品で、なお30万円以下に抑える、と言っているわけです。

以前から「レッツノートは高すぎる」とぼやいているわけですが、dynabook X83の最上級仕様と同等のスペックのレッツノート(おそらくCF-SR4かCF-QR4ということになるでしょう)を買おうとすると、40万円を大きく超えるはずです。そもそものスペックの設定範囲が異なりますし、今回のdynabook X83は企業向けモデルということもあり単純には比較できませんが、dynabookは圧倒的に安価に作られているのは間違いありません。

現在のダイナブックはシャープの子会社であり、シャープは台湾の鴻海(ほんはい)精密工業の子会社です。鴻海精密工業は様々なメーカーの電子機器を受託生産している世界最大手の企業で、例えばiPhone、Nintendo Switch、変わったところではソフトバンクのPepperくんなんかも作っているのだそうです。

グローバルに大量の製品を供給していますから、材料調達も安定的に、より低価格で行えるはずです。価格競争になったら、並の企業では到底太刀打ちできません。レッツノートが高価格志向になっているのは、そのことが目立たないように手間暇掛けて、徹底的に高品質なモノ作りに舵を切っているからなのかな?と思ったりもします(過剰とまで言うつもりはありませんが)。

時期は未定ですが、dynabook X83をベースにして、個人向けモデルも販売する予定があるのだそうです。そのときにどんなモノが出てくるのか、楽しみにしておきたいところですが、Meteor Lakeの足音が聞こえてきている中で、世代遅れの製品が出てくることになるのかもしれないなぁ…という不安もあります。まあ、まずは購入資金の調達をどうするか?なのですが。おカネ、ないなぁ(涙)。



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