現在、アメリカで「ワールドベースボールクラシック」(以下、略称の「WBC」)という野球の大会が開かれています。世界16の国や地域からの代表が、世界一を賭けて争う国際大会です。我らが日本代表は、今日の準決勝で韓国に勝利。キューバ代表との決勝戦に臨みます。決勝戦のプレーボールは日本時間で21日の午前11時。私はライブで見られそうです。楽しみですね。
野球の国際大会といえば、オリンピックやワールドカップなど他にもある(オリンピックでは2012年の開催競技からは除外されてしまいましたが)わけですが、WBCが他の国際大会と決定的に違うのは、アメリカのメジャーリーガーたちが大挙参加していること。各選手が出身国から出場しますから、イチロー選手(シアトルマリナーズ)などの日本人メジャーリーガーは日本代表として参加しましたし、日本プロ野球で活躍中のイ・スンヨプ選手(千葉ロッテマリーンズから読売ジャイアンツに移籍しましたが)が韓国代表に加わっています。
16カ国という参加国数が、サッカーのワールドカップなどと比較すると少なく感じるわけですが、実際のところ、野球の強豪国…というより、野球をまともにプレーできるナショナル・チームが組める国をリストアップしたらこの程度しかないのが実情だと思います。そもそも、野球がオリンピックの開催競技から外されてしまったのも「グローバルではない」ということが大きな理由に挙げられていましたしね。
大好きなスポーツである野球の国際大会ということで、本来なら私も興味津々…となるかも知れないわけですが、意外なほどに冷めていました。というのも、この大会はあらゆる面でアメリカ主導で行われている大会で、アメリカらしい嫌らしさばかりが目立ったものですから。
そもそも、オリンピックやワールドカップへの選手派遣ではなく、新しい大会を立ち上げた…というところで、自分たちが勝てるような大会にしようとする意図が見えます。そのために、メジャーリーグが各球団のオーナーに首を縦に振らせ、選手たちをかき集めたんですから。同じようにアメリカが圧倒的な強さを誇るバスケットボールなどでは、既にプロ選手がオリンピックに出場し、簡単に金メダルを取れるわけではないことを証明しています。
ただ、こうしたMLB側のやる気に反して、選手たちの側の反応は分かれました。日本人選手でも、松井秀喜選手(ニューヨークヤンキース)は参加を見送りましたよね。国内リーグ開幕の直前で、そちらを優先したい気持ちがあるのは理解できます。WBCでは給料をもらえるわけではありませんからね。プロ選手のプレーには生活がかかっているんですから。
アメリカだけでなく日本でも、野球のプロリーグは、WBCのようなプロ寄りの大会のときですらも、サッカーのような「国際大会の期間には国内リーグを休む」という対応が出来ません。国際大会に対しての熱意が全然見えてきませんね。一応は野球先進国である日米でのこうした対応が、野球がグローバルな競技になりきれず、オリンピックからも外されることにつながったのかも知れません。
地域別の予選1次リーグ、提唱国アメリカでの予選2次リーグ、決勝トーナメント…という流れも、一見サッカーのワールドカップをお手本にしたようで、よく見ると不自然なところがあります。一番変なのは、決勝トーナメントの最初になる準決勝で、2次リーグで同一リーグの1位チームと2位チームが対戦するところ。普通なら絶対こんな組み方はしません。おかげで日本代表は韓国代表と3回も対戦する羽目になったわけです。優勝する「予定」のアメリカチームがなるべく強豪チームと当たらないように組まれた…と言われかねない配置になっていました。
アマチュアでは最強といわれるキューバ代表に対して、当初は連邦政府側が入国に難色を示した…というのもいかにもアメリカらしいところです。スポーツ大会の場にも政治を持ち込みたがるのも、この国の国民性のような気がしました。もっとも、強豪・キューバがいなくなることでアメリカ優勝の可能性は高くなるわけで、内心では強硬に突き返すことを期待していたのかも。
始まってみると、WBCは意外なまでにたくさんの話題を提供してくれました。日本代表のハラハラする闘いぶりは、国内での盛り上がりに確実に貢献しましたね。アメリカほどではありませんが、勝って当たり前というプレッシャーの中で戦っている日本代表。しかし、話はそう簡単ではありません。1次リーグで韓国に敗れてアジアトップ通過を逃し、2次リーグではまたしても韓国に敗北を喫して、自力では決勝トーナメント進出を決められませんでした。何より、言い出しっぺのアメリカが、決勝トーナメントに進めなかったんですからね。一発勝負の恐ろしさです。
しかし、それ以上に大きく取り上げられたのが審判の問題。日本代表も、審判の「疑惑の判定」に振り回されました。明らかなミスジャッジが覆らない…というのは、野球に限らずいろいろなところで見かけるわけですが、それにしても国の名前を背負った大一番の、勝敗を決しかねない重要な場面で、あまりに拙いミスが目立ちます。
審判はアメリカが用意したわけですが、メジャーリーグのオープン戦などに取られてしまい人材不足だったそうですね。だいたい、国際大会の審判は参加各国が協力して出すのが当たり前だと思うんですが。予選2次リーグの日本×アメリカ戦では、アメリカ側ベンチからの抗議を受けて、審判団が協議して判定が覆った…と取られかねないこともありました。いろいろなことが重なって、事の真偽はともかく「アメリカびいきなのではないか」という不信感が広がった気がします。これでは試合に集中できませんよね。
ところで、今日の日本×韓国戦を前に、韓国の選手がドーピング検査に引っかかり出場停止になりました。反ドーピングの流れはもはや国際的に常識なんですが、プロ野球の世界ではこれまでドーピング撲滅には積極的に取り組んでいなかったと感じます。こうしたところも変えていかないと、野球でプロの選手同士が国際試合で戦うことは出来ないと思います。
いろいろと見ていくと、WBCの運営には穴が多く、これで真の「野球世界一」が決まるとはちょっと思えません。しかし、いろいろと問題はあるものの、今回はこのような大会を開けたことそのものに価値があるのだと思います。何より、非常に腰の重かったアメリカ・メジャーリーグを動かしたわけですからね。文句を言いながらも、私自身気が付くと毎日のWBCの展開が気になるようになっていました。「最強の選手たちが集う国際大会」にはやっぱり魅力があります。
問題点はこれから改善していけばよい…と思うわけですが、心配なのは3年後に予定されている次回の大会が本当に開催されるのかどうか。何しろ、アメリカが勝つために始めた大会で、自らが勝てなかったわけですからね。「勝てないからつまらない」と次回からは開催しないのか、「次回こそは勝つんだ」と優勝できるまで開催され続けるのかのどちらかのような気がしてしまいます。もちろん、もっと大局的な視点で、野球という競技の世界的な発展を願って続くのなら歓迎なんですが…。
野球世界一を賭けて各国の代表チームが戦っているワールドベースボールクラシック(WBC)。いよいよ明後日の決勝戦を残すのみとなりました。初代王者に輝くのは日本代表か、キューバ代表か。楽しみにしています。
ただ、WBCのやり方そのものにはいろいろと気になる部分もあるんですよね。初めて開催される大会ですから、仕方ないところもあるのでしょうけど、基本的には実にアメリカらしい大会だと感じます。どうやら、彼らは筋金入りの負けず嫌い…と言うよりも勝たないと気が済まない質のようですが、それが決勝トーナメントにも進めなかったんですから、相当ショックだったはずです。「私たちは、3月は一番になれなかった」と、次回の開催時期を変えることも考えているらしいですね。まあ、実際に運営方法にはまだまだ検討の余地があるのでしょうけど。
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