青い歯は1本だけらしい
前回の記事でご紹介した私の新しいケータイ・P902i。そのときにも触れていますが、P902i最大の売りの一つといえるのがBluetoothの搭載です。Bluetooth(ぶるーとぅーす)とは、10m程度までのごく近距離を対象に複数のデバイス間を無線通信で接続するための世界統一規格。標準化団体のBluetooth SIGが立ち上がったのは1998年になります。
そもそも、「Bluetooth」というのは10世紀の北欧・バイキングの王様の名前だそうですが、その割に綴りは英語そのものですよね。日本語の文献には「青歯王」と出てきますし、名前そのものというよりは通称を英訳したもののようです。
その青歯王は、当時のデンマークとノルウェーを統一した人なのだとか。複数の機器を統一規格でつなぐ無線通信に、彼のイメージを重ね合わせているわけです。この規格を最初に提唱したのはスウェーデンのEricsson社。そして、Bluetooth SIGを立ち上げたときにはフィンランドのNokia社も加わっています。バイキングの王様から名前を取った気持ちもよくわかりますよね。余談ですが、「Blueteeth」でないということは、おそらく青歯王の青い歯は1本しかなかったのでしょう。
そして、この2社は携帯電話端末を作る有力なメーカーであることも共通点です(SIGのオリジナルメンバーでは東芝もそうですね;残りはIBMとIntelでした)。Bluetooth自体が、携帯電話を強く念頭に置いた規格なんですよね。Version1.xの仕様では最大1Mbpsのデータ通信が可能ですが、その中でも64kbpsの音声データストリームは優先して送れるようになっているのだそうです。明らかにヘッドセットやハンズフリー機器用の通信手段を意識しています。もちろん、それ以外のことにも使えるんですけどね。
とにかく相手を用意する
せっかくのBluetoothも、通信する相手がなければ使いようがありません。しかし、浜松市内の店ではBluetooth関連商品を探すのはかなり難しい状況です。まだまだ普及しているとは言えませんからね…ケータイ最大シェアのキャリアの売れ筋モデルであるP902iが、この状況に風穴を開ける可能性もあるんですが。ともかく、今回は東京に出かけたついでにいくつかアイテムを買うことにしました。
先に触れたとおり、Bluetoothといえばやっぱりワイヤレスのヘッドセットを抜きにしては語れません。これについては、以前から狙っていた製品がありました。それが、このJabra BT800。JabraはBluetoothヘッドセットでは世界最大シェアを持つブランドで、デンマークのGN Mobile社の製品です。まさに青歯王のお膝元ですね。
【JABRA Bluetooth ハンズフリ-ヘッドセット BT800】
耳掛けフックを回転させることにより、右耳にも左耳にも装着することが出来ます。実はまだ自分の中でもベストポジションが見つからず、もう一つフィット感が乏しいんですが、これはそのうち慣れが解決してくれるのではないかな?と思っています。
本体の裏側には鮮やかな青色バックライトの液晶ディスプレイが装備されています。ここにメニュー画面を表示していろいろな設定をしたり、着信時には番号を表示したりできる超多機能機です。充電はACアダプター以外にもパソコンのUSB端子からの給電に対応しているんですが、このUSBケーブルはファームウェアのアップデートにも使われるようです。
もう一つ、P902iとパソコンをつなぐためのUSB接続のBluetoothアダプタを買いました。エレコムのBT-UD1(写真上)は、最大3Mbpsの転送速度に対応したVersion2.0+EDR規格に対応(筐体にも「EDR」と書かれたシールが貼ってあります)しながらも、他社製品よりコンパクト。一般的なUSBメモリよりも小さく、赤外線インターフェースのIrSTICK(写真下)とそれほど大きさは変わりません。
【ELECOM Bluetooth対応アダプタ BT-UD1】
汎用のBluetoothアダプタなので、実に12種類ものプロファイル(ここでは「データの使用方法」とでも言い換えればいいのでしょうか)に対応しています。携帯電話をモデムとして使うダイアルアップネットワーク以外にもファイル転送など様々な使い方が出来ますし、BT800と接続して、テレビ電話や最近話題の無料通話のインターネット電話・Skypeなどのヘッドセットとしても使えることになっています。
お見合いの後は二人任せ
Bluetooth機器は、もともと周辺機器の接続を念頭に置いた規格ですから、親機が子機をコントロールするマスター・スレーブ方式で動作します。最初に使うときだけは「ペアリング」と呼ばれる操作が必要になります。これは、親機から子機の電波を探索し、暗証番号を使って1対の機器間の認証を行うものです。Bluetooth機器には、ちょうどLAN機器のMACアドレスのような固有のIDが割り振られているので、これを使って機器自身に自分のパートナーを覚えさせておきます。
ペアリングが済めば、その後は機器相互が相手の電波を認識するだけで自動的に通信が確立します。例えば、P902iのすぐ側でBT800の電源を入れるだけで即ワイヤレスのハンズフリー環境が準備できたり、BT-UD1をCF-R4のUSBコネクタに差せば後はダイアルアップで発信するだけになったりするわけです。これは非常に楽ですね。ちょうど、お見合いでは最初だけは仲人が入りますが、お互いが相手のことを覚えれば後は二人きりで会えばいい…というのに似ているような気がします。
見方を変えると、Bluetoothの利点を生かすためには電源を入れている限り電波を探索し続けなくてはならないことになります。こうなると心配なのは消費電力ですが、通信距離をごく短くしていることがここでは有利に働きます。Bluetoothの規格上では、通信待ち時の消費電力は最大でもたったの0.3mW。通信時でも0.8mWしかありません。実に微々たるものです。これなら携帯電話のように電力消費にシビアな機器にも組み込めます。
1,000年の時を超えて
こうして見ていくと、Bluetoothは実に良くできた規格のはずなんですが、どうもメジャーになりきれていません。立ち上がりのときに製品が順調に出てこなかったこと、Microsoft社がなかなかWindowsでのサポートをしなかったことなど、いろいろな不運が重なったような気がしています。全然使い道の違う無線LANと比べられて、「通信距離が短いし、速度も遅い」とマイナスイメージが定着してしまったのも不幸でした。
もっとも、ここに来てP902iなどでの利用を狙ってBluetooth接続のワイヤレスヘッドホンが各社から発売されるなど、ようやく普及しそうな気配も見せています。1,000年ぶりに復活した青歯王は、10年近かった雌伏の時を堪え忍びましたが、これからいよいよ復権できるのでしょうか?。しばらく注目したいところです。
今回は、FOMA P902iの最大の特徴の一つであるBluetoothを取り上げています。今回のタイトルを見ると、「青歯王」は「あおばおう」と読んでしまいそうになりませんか?…すみません、確信犯です(笑)。歴史書的にはやっぱり「せいしおう」あたりが正解なのでしょうけど。
ワイヤレスヘッドセットのJabra BT800は、その多機能さだけではなく、未来的なデザインも魅力的です。エリクソン(現・ソニーエリクソン)やノキアの携帯電話、レッツノートの「鎧」でもお馴染みのボブルビーのバックパックなどのデザインにもつながる、いわゆる「北欧デザイン」ですね。各製品の意匠が類似している…というわけでもないと思いますが、質実剛健というレベルを飛び越えた機能美が彼らのデザインセンスの肝のような気がします。
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