苦難のセットアップ

64bitドライバの壁

前回からの続き。新しいパーツを組み込む前に確認しておきたいのが、ハードウェア全体のWindows XP Professional x64 Editionへの対応状況です。これまで使っていたパーツも、新しく購入したパーツも、当然32bit版のWindows XPには対応しているわけですが、同じWindows XPでもx64 Editionではデバイスドライバが共用できません。つまり、x64 EditionのインストールCDにドライバが収録されているか、機器メーカー側がx64用のドライバを提供しているかしない限り、利用できないことになります。

マザーボードに搭載されている各デバイスについては、添付されていたCDにx64用のドライバが一通り収録されていました。ビデオカード用のドライバも、かなり早い段階からx64版が提供されていました。とりあえずまともにパソコン本体を動かすことは出来そうです。キヤノンのプリンタとスキャナにはドライバの提供される予定はなさそうですが、印刷やスキャンの作業自体は、ブラザーがFAX複合機のx64用ドライバを提供していますから問題ありません。どうしてもキヤノン機を使いたければ、当面は32bit版を起動して使えばよいことですし。

MTV1000とMTVX2005

テレビチューナーカードのMTV1000は、さすがにx64非対応でした。もともとこの分野はx64への対応が全然進んでいません。家電のDVDレコーダーを買おうか少し迷いましたが、結局x64への対応が行われている新しいチューナーカードを購入しました。MTV1000と同じカノープスが販売するMTVX2005(写真下)です。

MTV1000(写真上)よりもずっとコンパクトなカードに高画質化機能も搭載。そして価格は半額以下の1万円台前半でした。技術の進歩ですね。モデルチェンジで新型のMTVX2006HFが出ていたのは知っていましたが、あまり代わり映えしなかったので、売値が下がってお買い得になったこちらを購入しました。MTVX2006HFはAthlon 64 X2環境で不具合も出ているようでしたし。

ソフトにも壁が

ソフトウェアのx64環境への対応も重要です。32bit版で動いていたアプリケーションについては、基本的に「WOW64(Windows on Windows 64)」というエミュレータを経由することによりそのまま動くことになっています。旧システムの資産継承を大事にしてきたMicrosoft社ですから、この辺りには抜かりない…と言いたいところなんですが、蓋を開けてみると話は意外にややこしいんです。

例えば、32bitアプリケーションであるワープロソフト「一太郎2005」は動作するんですが、一太郎の肝とも言えるかな漢字変換システム「ATOK2005」は、64bitアプリケーションとの組み合わせでは使えません。ウイルス対策ソフトは、その多くがx64環境には対応していません。PDF形式の文書を作成するAdobe Acrobatや、他社の販売している同様のソフト類も動作しません。普段の利用状況のかなり根幹に関わる部分で影響を与えます。

それぞれに動作しない事情は異なりますが、これらのソフトを見ていくと共通なのが、システムの奥深いレベルで他のソフトとの連携を行うソフトであること。これらはWOW64ではカバーしきれないんですね。決定的に改善するのは、64bit版が用意される予定の一般向けOS・Windows Vistaの登場待ちでしょうか。Windows XPの登場を待っていたWindows 2000時代を思い出します。

最新版が使えない?

今回は、32bit版と64bit版のWindows XPのどちらかを選択して起動できる、いわゆるデュアルブート仕様にすることになりますが、方法自体は至って簡単。まず最初に32bit版を、次に64bit版を普通にCD-ROMから起動してインストールすれば出来上がりです。それぞれのWindows XPは別パーティションにインストールすることになるので、あらかじめそれを考慮した切り分けを考えておかなくてはなりません。まあ、これについては前回決めてあるわけですが。

RAID構成のドライブにインストールする場合には、先にBIOS画面でRAIDアレイを設定しておく必要があります。また、インストーラの起動時に読み込めるように、フロッピーディスクにドライバを用意しておく必要があります。この辺りは、読み込ませるときに[F6]キーを押す手続きも含めて、32bit版でも64bit版でも変わらないんですが、先に触れたとおりドライバは別になるので、当然ながら内容の違うそれぞれのフロッピーを作成しなくてはなりません。nForce4 UltraチップセットのシリアルATA RAIDを組み込む場合、フロッピーディスクを入れると表示される2種類のドライバを両方組み込まなくてはならないことにも注意しましょう。

そんなことをチェックしながら32bit版のインストールはとりあえず終了。続いて64bit版を…となったわけですが、テキストベースのインストールが終わり、再起動されたところで異変が発生しました。よく見慣れたWindows XPロゴの起動画面が10秒くらい続いた後で、自動的に再起動。また起動画面が表示されて再起動…の無限ループに陥ってしまったんです。改めて手順を確認してからやり直してみても、結果は変わりませんでした。

こんなときに頼りになるのが、ネット上での口コミ情報。早速検索してみたところ、GA-K8N Ultra-9と添付されているCD-ROMのx64用ドライバでは正常にWindows XPがインストール出来ない事例が複数報告されていました。しかも、彼らの記述を読んでいくと、チップセット製造元のnVIDIA社のWebサイトから最新版のドライバをダウンロードしてもダメ。どうやら6.56以前のバージョンのベータ版なら大丈夫なようです。普通は、バージョン番号が大きくなるのはブラッシュアップされて動作が安定することを意味するんですが、未保証のベータ版の方が安定しているなんて…。

とりあえず動きます

6.56ベータ版は、今ではnVIDIA社のWebサイトでも掲載されていません。キーワードを変えながら検索…というのを繰り返して探し回り、ようやく見つけてダウンロードしました。

インストール用のドライバディスクを作ってWindows XPをインストールすると、途中で「ファイルが見つかりません」というエラーが出てびっくりします。ただし、拡張子が「.cat」のファイルの場合は心配ありません。このファイルはセキュリティカタログというもので、Microoft社がドライバに認証を出しているかどうかの証明書のようなものです。つまり、これが無くても動作自体には問題がないはずです。実際に、このファイルをスキップした状態でもインストールは完了し、今のところちゃんと動作しています。

購入したときには、売れ筋のメーカーの、売れ筋のチップセットを組み合わせた製品で手堅く行ったつもりだったんですが…すっかり油断していました。やっぱり購入前の綿密な下調べは大事です。まあ、今回の問題自体はドライバが原因で、ハードウェアの不具合ではなさそうですから、将来的には解消するのかも知れないんですが。

これでようやく待望の64bit版Windows XPが動くようになりました。後はアプリケーションを入れて、とことん使い倒して、出来ればスピード比較も…と言いたいところだったんですが、話はこれで終わらなかったんです。さらなるS.S.K.のドタバタ日記は、また回を改めて。

新しいOSをインストールするときには苦労が付きものなんですが、今回のWindows XP Professional x64 Editionも例外ではありませんでした。引っかかる重要ポイントがドライバ関係であるところも、これまでのパターンとよく似ています。

かなり長い間、まともに動作しない状態が続いていたんですが、正直なところあわてていませんでした。というのも、レッツノートは常に使える状態でしたから。情報収集やインストール用フロッピーの作成にも、レッツノートを使いました。複数台のパソコンがあると、こういうときに助かりますね。…というよりも、私のような趣味だとむしろ必須なのかも知れません。


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