熱っちいCPUを冷ますんだっ。

発熱する準備はできていた…が

どこかからパクってきたようなタイトルですが、内容としては前回の続き。自作パソコンのCPUをPrescott版のPentium 4に交換してみたわけですが、Prescottと言えば消費電力とそれに伴う発熱の話を避けて通ることはできません。これまでは配線幅が小さくなるとCPUの消費電力は下がり、動作周波数の上昇とともにまた増えていく…という流れでしたが、その法則がここに来て崩れていることには前にも触れました。今やCPUの消費電力は100W以上。ただ、問題はこの「最大値」だけではないんですよね。

消費電力増大の原因とされているのが「漏れ電流」。あまりに配線同士が近づきすぎて、それぞれの間を完全に絶縁しきれなくなっている…という構造的な問題で、Pentium 4のIntel社に限らず各社とも90nmプロセスではこれに苦労しています。漏れ電流の厄介な点は、CPUの動作状態にかかわらず常に流れ続けてしまうこと。つまり、最大消費電力だけではなく待機時の消費電力までも押し上げてしまい、この結果常に温度が高い状態になるわけです。

AquaGizmo

そんな状況を理解した上であえてCPUを交換したくらいですから、この発熱をコントロールする自信はありました。その根拠は冷却性能に配慮したアルミケース、そしてカタログ値では150Wの冷却能力を持つ水冷CPUクーラーのAquaGizmo。どちらも現在市販されているものの中ではかなり高いレベルだと自負しています。これで何とかならないようでは市販品として大問題では?と思っていました。

意外に冷えないAquaGizmo

CPUを交換した後、元通りにAquaGizmoを取り付けました。電源を入れ、Windowsを起動した直後のCPU温度は48度C。Northwood + AquaGizmoの組み合わせでは、思いっきり負荷をかけた後でも一度も見たことがない数値でした。そこからベンチマークソフトなどで負荷をかけると、最高で63度Cにまで上昇。覚悟はしていたものの、まさかここまで熱いとは思いませんでした。

前回も紹介したとおり、CPUに同梱されている空冷クーラーにもなかなか気合いが入っています。試しに、十分に本体が冷えた後でこれを取り付けてもう一度起動してみると、起動直後には48度C。負荷をかけたら63度C…つまり、温度変化だけ見るとAquaGizmoと全然変わらないことになります。

「水冷なのにどうして冷えないの?」と責めるのはかわいそうなところです。AquaGizmoは、筐体内の空気をラジエーターに当てて外に吹き出す仕掛けになっています。筐体内には他にもいろいろな熱源があって、出口ではずいぶん空気が暖まっていますから、ラジエーターが完全に筐体外にあるものと比べると条件は不利になります。しかも、ラジエーター自体も筐体内に置かれていますからね。温度よりもむしろ、空冷クーラーよりも格段に静かな動作音で同じ性能を発揮していることを褒めてやるべきでしょう。

冷ます前に熱を抑えろ

一応、このままの状態でも熱暴走することはなく普通に動作はしています。しかし、ケース上面を触ると「熱い」と感じるほどの状態で、筐体内温度がかなり上昇していると思われるので、基盤上などのパーツの寿命も考慮すると心配な状態です。考えてみると、ケースが熱くなるのはケース自体が放熱に寄与していることの表れなんですよね。

この状態からもう少し温度を下げられないか考えてみました。まず思いつくのは、ファンをより高回転のものに替えて、筐体内の空気の入れ換えを強化することですが、これはかなり騒々しくなることが予想されるので、できることならやりたくありません。ラジエーターが筐体外にあるさらに大がかりな水冷CPUクーラーを導入する…という手もありますが、全体の取り回しが煩雑になることや機構の信頼性、費用などを考えるとこれもちょっと辛いところです。

そこで、思いついたのがCPUの動作電圧を下げること。一般的にCPUの消費電力は動作周波数と「電圧の2乗」に比例しますから、周波数はそのままに電圧だけ下げられるなら、パフォーマンスを下げずに消費電力を下げることができます。しかも、先に挙げた「熱を発散させる」方法とは違い、発熱自体を抑えるスマートな方法です。

EazyTune4;拡大画像サイズ36.3KB

それでもやっぱり熱い

動作電圧の設定は、BIOSセットアップ画面で行うのが普通ですが、最近はWindows上からユーティリティソフトで行えるものも結構見かけます。私が使っているマザーボード・GA-8IPE1000 Pro2でも、「EasyTune4」というソフトから電圧の他にも動作周波数などを変更できます。これを使えば再起動させることなく動作確認が可能で非常に便利なんですが、一方でWindows上でソフトを起動させなくても変更できるのがBIOSセットアップ画面の強みです。

BIOSセットアップ画面で動作電圧を下げる

一般的に、同じCPUコアなら動作電圧を下げるほど高い周波数での駆動が難しくなりますから、規定の3.2GHzで動作する電圧には下限があるはずです。0.0125Vずつ小刻みに下げながら試してみたところ、私の買ったPentium 4 3.2EGHzの場合は、標準の1.3875Vから1.2000Vまで電圧を下げても安定動作ができるようです。理論的には消費電力は約4分の3になるはずなんですが…。

動作電圧を下げた状態で起動してみました。Windows起動直後のCPU温度は43度C。さらに負荷をかけてみると55度Cまで上昇しました。CPUクーラーの改良だけで8度Cも下げるのは至難の業ですから、温度変化としては結構劇的だと思うんですが、それでもNorthwoodコアでの実績と比べると約10度C高いですね。処理能力には大差ないことを考えると、これでもちょっと辛い気がします。


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