番外編:2004年6月20日(日)
花博会場で歌う
前回のたった3日後の6月20日に、私は再び花博会場を訪れることになりました。ただ、今回は展示を見に行ったわけではなく、目的は何と歌を歌うため。しかも、それが日本全国に向けて生中継されます。
NHKでは、月に1回程度のペースで、丸一日かけて生中継を行い1つの都道府県の魅力に迫る「おーい、ニッポン」という番組を制作しています。1998年から始まり、既に2巡目に入っているこの企画なんですが、6月20日の放送は「私の好きな静岡県」ということになりました。2巡目では、第一線で活躍する作曲家たちが地元にまつわる曲でメドレーを作り発表するという「ふるさとラプソディ」が目玉の一つになっています。演奏も地元のオーケストラと合唱団が行うんですが、私たちの合唱団にも声がかかり、私も含めて20数人が参加することになりました。
「おーい、ニッポン」はNHK衛星第2で放送されます。何人かの友人に「もしかしたらテレビに映るかも」と連絡したんですが、返事は「BSは見られないからなぁ」というのが多くてちょっとがっかり。13年くらい前から自宅に衛星放送の設備があった(今年放送開始15周年だそうです)私からすると「まだ持ってないの??」と言いたくなるところでしたが、BSデジタル、CS放送、地上波デジタルと放送が進化していても、実際にはまだまだ普及していないと言うことなんですね。
あっけない全体練習
5月29日に、当日演奏を行うオーケストラを交えて、市内の公民館で全体練習が行われました。事前に全員が集まって行われる練習は、この練習と前日のリハーサルだけ…という貴重な機会でした。あとは「各合唱団での自主練習で」ということになります。
当日の指揮者である作曲者の藤野浩一氏が、この日もタクトを振ったわけですが、最初に一度通した後のコメントが「素晴らしい。皆さんよく練習してきてくれました」でした。来る前に譜面を見て2回通りくらいしか歌っていなかった私は申し訳ない気持ちになりました。楽譜とオーケストラ分を録音したMDを渡されていたんですが、最初はこの日は事前説明会だと思っていたので、まだしっかりとチェックできていなかったんですよね。
その後数箇所歌い方について指導があり、2回ほど全曲を通しただけで、予定よりもずいぶん早く練習は終わってしまいました。藤野氏は「大丈夫です」と太鼓判を押してくれました。第九などに比べるとずいぶん簡単なアレンジだとはいえ、ここまで言われると逆に心配になりました。今後の各自での練習に期待されたのかな?と思いました。
緊張の前日リハーサル
本番前日の6月19日には、花博会場でリハーサルが行われました。しずおかラプソディが披露される場所は、会場の中では最も大きなイベントが開かれる「水辺の劇場」です。立派なステージなんですが、それでもさすがにオーケストラと400人以上の合唱団が全員ステージに上ることはできませんから、合唱団は観客席の側に並んで歌います。本番は会場が閉園した後で観客は一人もいませんから、このスタイルでも全然問題ないんですね。
ここまでの「自主練習」は、合唱団としての合同練習は一度も行わず、各自で練習しておくことになっていました。楽譜とオケのMDだけでは音程を掴むのが大変なので、各パートの旋律をMDにオーバーダビングした練習CDを作りました。既存の音声データにMIDIデータのテンポを同期させるのは本来大変なんですが、もらったMDも打ち込みで作られたものだったので微妙なテンポの揺れはなく、同期には意外に手こずりませんでした。
リハーサルは花博会場が閉まった後の夕方から行われました。誰もいない花博会場にはものすごい違和感を感じました。だいたい、夕方5時半には会場は閉められてしまいますから、薄暮の花博会場という状況自体なかなか見られないんですよね。
基本的に、やることは5月の全体練習のときとそう変わらないわけですが、一つ明らかに違ったのはカメラの存在感でした。いわゆる「カメリハ」(「カメラ・リハーサル」の略ですね)で、本番を想定して全く同じようにカメラが回ります。クレーンカメラは縦横無尽に飛び回ります。これだけで緊張感が全然変わってしまうんですから不思議です。
カメラが本番と同じ動きをするということは、これを見ていれば本番の時に映るのかどうかもよくわかったはずなんですが、そこまでの余裕はありませんでしたね。会場が変わったことにより、オーケストラの音の聞こえ方も、自分たちの歌声の聞こえ方も変わってしまいます。自分の目の前でクレーンカメラがしばらく止まっていたのには気が付きました。もっとも、そのときカメラはそっぽを向いていましたが。
感動の本番
当日・6月20日は、まだ一般にも公開されている午後4時過ぎに会場入りしました。さすがに会場内の展示を見る時間は全くありません。だいたい、今日は「仕事」で来ているんですからそれどころではないのですが。
事前に、午後5時15分頃から「もうすぐ本番」という中継が入ると聞いていたのですが、その時間帯が近づいても全く説明がありません。それどころか、5時頃にオーケストラの練習が終わった後には「次は6時から最後の練習」との指示。不審に思いながらもしばらくその場に座っていると、5時半頃に「実は今中継が終わりました」と説明がありました。自然な雰囲気を放送するためにあえて何も言わなかったのだとか。
本番は午後6時半から。前日と直前のカメリハのおかげか、本番では余裕を持って気持ちよく堂々と歌えました。生中継されているという意識は全然ありませんでしたね。「歌ではカメラ目線は禁止」ということになっていたので、そうした意味でもカメラを意識せずに済んだのかもしれません。
歌い終えたときには、一つのことをやり遂げた満足感がありました。正直なところ全体練習の時には「もしかして結構楽勝な企画?」と思っていたんですが、それでもやっぱり一つの作品を仕上げるためには気は抜けません。本番は良い演奏にしよう!という気持ちは強かったですね。丸一日かけた番組のラストを飾る素晴らしい演奏だったのではないかな?と思いっきり自画自賛しておきましょう。
浜松駅に戻ってきてから、合唱団の人たちと打ち上げでちょっと飲みに行き、家に帰った後で録画しておいた番組を見てみました。小学生の子供たちやセーラー服の女子高生がメインで、私はもしかしたら全然映っていないかも?と思っていたんですが、恥ずかしくなるくらいたくさん映っていてびっくりしてしまいました。元々男性が少なかったから…ということはあるのでしょうね。当日の合唱団440人中、約300人がソプラノだったそうですし。
今日のアクセス
自宅?【路線バス】?浜松駅?【直行バス】(無料)?会場・関係者専用ゲート
リハーサル、本番ともに会場へは団体ごとに用意されたバスに乗って向かいました。ルートそのものは前回乗った定期バスとほぼ同じですが、違うのは到着した後。正面のときめきゲートからではなく、関係者専用ゲートから入場することになります。イベントへの出演者ということで、入場料は無料。ただし、それを証明するために催事団体入場証というものが渡され、これを首からぶら下げて歩きます。
両日とも終了する頃にはすっかり外は暗くなっていましたが、帰りのバスは水辺の劇場すぐ裏の会場内で待っていてくれました。真っ暗な会場内を歩かずに済みました。考えてみると、花博会場内でバスに乗って移動するのもなかなか経験できることではありません。
今日のお食事
リハーサル、本番とも、ステージ脇の控え室に飲み物が用意されていたんですが、あまりに人が多すぎて控え室は大混雑。これでは飲むどころではありませんでした。あと、両日とも終了後にお弁当をいただきました。こちらは想像していたよりもかなり豪華なお弁当でした。NHKさん、どうもありがとうございます。
今日のお土産
お土産とはちょっと違いますが、「出演記念品」としてこんなものをいただきました。「静岡県」と大きく書かれたクリアファイルは、この手のものを結構使う私としてはうれしいところです。小さな四角いものは、二つ折りのボール紙製ですが、簡易写真立てなのだそうです。ちょっと耐久性が不安なので、これはタンスの中にでもしまっておこうと思います。
そしてもう一つ、意外に使えそうなのがオレンジ色のボールペン。太めの三角形の軸が指にちょうどフィットして、書き心地は上々です。しかも、「遠赤外線効果で疲れを癒すトルマリングリップ」なのだとか。このあたりの効果はちょっと怪しい気もしてしまいますが。
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