「E」の実力テスト

使わないつもりだったのに

巷は夏のボーナスの季節。もちろんもらえる人ばかりでもないわけですが、一時期に比べると暗さは少し減ってきたような気もします。私のところにもそれなりにボーナスが入りました。額そのものはなかなか増えないんですが。

ボーナスを当てにして、またもパソコンに新しいエサを与えてしまいました。それはPentium 4 3.2EGHz版。配線幅90nmのPrescottコアを使った新世代のCPUですね。前に「使わない」と決めた経緯があるわけですが、とある事情で新しいCPUがもう一つ必要な状況になり、せっかくだからちょっと試してみようかと思ったわけです。最大の懸案はPrescottコアの発熱なんですが、これについても体験してみなくてはわかりませんからね…勝算はそれなりにあったんですが。

箱・3.2GHz版(左)と3.2EGHz版

間違い探し(^_^;)

Northwoodコアの3.2GHz版とPrescottコアの3.2EGHz版。財政的事情もあり、結局同じ動作周波数のものを選ぶことになったので、名前の上では「E」が付いているだけの違いしかないわけですが、まずは実際に両方を見比べてみましょう。

パッケージ表面・3.2GHz版(左)と3.2EGHz版

1.6AGHz版と3.2GHz版を比べたときと同様、同じSocket478用のPentium 4ですから、外観からは違いを探すのが難しいところです。外箱に書かれている周波数表記やL2キャッシュの容量を示す数値、ヒートスプレッダ上に書かれている年号や仕様、原産地表示といった細かいところに違いが見られる程度です。

パッケージ裏面・3.2GHz版(左)と3.2EGHz版

CPUを裏返してみると、ちょっと様子が違うのがわかります。もちろんピンの配置は全く同じなんですが、3.2EGHz版では中央に並んでいるチップの個数がずいぶん増えています。周波数が上がり、配線が細かくなるごとに、電気的な条件はどんどんシビアになっているはずです。開発スタッフの皆さんの苦労の跡を見た気がします。

ヒートシンク形状・3.2GHz版(左)と3.2EGHz版

一見同じように見えて、実はかなり違うのがCPUクーラー。よく見ると、中央から出ているアルミ製のフィンが微妙に斜めになっていて、4方向に伸びるリブもずいぶん細くなっています。大きさや重さに制約がある純正クーラーですが、そんな条件の中でできるだけ表面積を増やし、冷却性能を確保しようとしているのでしょう。

冷却ファン・3.2GHz版(左)と3.2EGHz版

また、ファンの羽根の形も微妙に違います。こちらはおそらく騒音対策ですね。羽根の形状を工夫すると、同じ回転数や風量でも風切り音はずいぶん低減できるのだそうです。

ムラのあるパワー

同じ動作周波数だと、Northwoodコアよりも劣ることもあると言われるPrescottコアですが、実際のところはどうなんでしょうか。このコーナーではたびたび登場しているCrystalMarkを使って比較してみましょう。今回からメジャーバージョンアップ版の「2004」を使っているので、これまでの数値との直接比較はできないことにご注意ください。

CrystalMark 0.9.101.179
Machine Northwood Prescott
ALU 8485 10343 (122%)
FPU 8487 10477 (123%)
RAM 8082 8006 (99%)
HDD 6733 6762 (100%)
GDI 7226 7289 (101%)
D2D 5456 5694 (104%)
OGL 21633 26173 (121%)
Mark 66102 74744 (113%)

演算能力以外が変わらないのは当たり前だと思いますが、演算能力関連の数値(最初の2コですね)が2割以上も上がっているのは正直なところ予想外でした。ただ、これをもう少し細かく見ていくと、話はそう単純ではないことが見えてきます↓。

CrystalMark 0.9.101.179
Machine ALU
Fibonacci Napierian Eratosthenes QuickSort
Northwood 2203 2138 2096 2026
Prescott 4431 (201%) 1868 (87%) 1629 (78%) 2393 (118%)
Machine FPU
MikoFPU RandMeanSS FFT Mandelbrot
Northwood 2128 2091 2096 2150
Prescott 1853 (87%) 4631 (221%) 2083 (99%) 1888 (88%)

同じカテゴリー内の個々のベンチマークの結果を比較してみました。CrystalMark 2004ではNorthwoodコアのPentium 4搭載機を基準に数値を設定していますから、Northwoodの結果が真っ平らになるのは当たり前。それをふまえた上でPrescottの結果を見ていくと、数値の大きなばらつきが目に付きます。Northwoodの2倍以上の成績をたたき出すものがある一方で、8項目中の5項目では100%を割り込んでいます。

さらに、前回の比較でも使ったもう少し実践的なテスト群で見てみましょう↓。

Machine Northwood Prescott
Superπ 1.1 104万桁 47秒 (100) 43秒 (109)
Shade R5 Personal 5分32秒 (100) 6分34秒 (84)
3DMark2001 SE 12812 12863
3DMark03 build340 5189 5242

CrystalMark 2004ほど極端な差の付いたものはありませんでしたが、SuperπではPrescottの勝ち、ShadeのレンダリングではNorthwoodの勝ち。そして2つの3DMarkではほぼ横並び…という感じでしょうか。

Canopus X-Transcoder (720*480 pixels, 1 min)
Machine MPEG2→DivX 5.1.1 MPEG2→Windows Media 9
Video: 1 pass VBR, 1500kbps
Audio: 192kbps, MP3
Video: 1 pass CBR, 1000kbps
Audio: 192kbps, WMA9
Northwood 1分18秒 (1.30倍、100%) 3分57秒 (3.96倍、100%)
Prescott 1分19秒 (1.32倍、98%) 3分54秒 (3.90倍、102%)

さらにもう一つ。MPEG2形式で録画したテレビ番組動画を、より高圧縮な形式にエンコードし直した結果です。処理時間のばらつきは非常に少ないので、DivX形式への変換が遅くなり、Windows Media 9形式への変換は速くなった…と言えなくもないのですが、その差は微々たるものです。もっとも、これを1時間以上の番組で比べれば分単位の違いにはなるわけですが。

どちらが上なのか?

これらの結果を見ると、どちらの方が処理能力で上回るのかは判断に困るところです。話には聞いていたのですが、これでは確かに動作周波数が同じNorthwoodとPrescottの間には優劣は付けにくいですね。3.2GHz動作品なら3万円前後のほぼ同じ価格で販売されていることにも納得できます。

一つ確実に言えるのは、Prescottには得意な作業と不得意な作業があるということでしょうか。見た目はそっくりでも内部にはかなり変更が加えられていることは間違いなさそうです。個人的には、Shadeのレンダリング速度が遅いことだけでも問題だと感じています。結局のところ、一番大事なのはそのパソコンを何に使うのかですから。

そんな私にとって、Prescottの価値を認められるかどうかは、こうして一部で下がってしまった処理能力や、より多くなった発熱を、新しい命令セットが追加された将来性の代償として許せるのかどうかにかかっていると思うんですが…この点についてはまた改めて触れてみようと思います。


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