今回は前回の記事の続きになっています。まだ読んでいない方は先に「小宇宙を覗く (1)」をご覧ください。もう読まれた方は次の段落に読み進めていただいて構いませんが、お食事前後に読まれるのはお勧めいたしません(笑)。
検査当日の朝がやってきました。天気は快晴でしたが、さすがに気分は「すっきり爽快」とはほど遠いものでした。これから検査前の最後の仕上げをしなくてはなりません。起床直後から、前日に仕込んでおいた経口腸管洗浄剤を飲み始めました。少し塩辛い味がして、水に比べると微妙に粘性が高いような気がしました。
ところで、少し前にニュースで「副作用で死亡例」との報道があったのはこの薬。こんなことで死んでしまってはたまりませんから、注意書きを読みながら慎重に、とにかくゆっくりと飲み続け、指示されているとおり約2時間で全て飲みきりました。半分くらい飲んだ頃から便…というよりも液体がそのまま肛門から排泄されはじめて、3時間半後くらいまでにはほぼ無色透明のものが出てくるようになって準備完了…となりました。
ところで、薬を飲み終わった後で体重を量ってみたら、飲む前よりも1.5kgくらい軽くなっていました。内臓に溜まっていたものが全部出てきたわけですから、当然と言えば当然のことなんですが。ダイエット用に似たような薬も売られているらしいですね。
前回は病院まで車で出かけたんですが、今回は「眠くなる薬を使うから」というお話だったので、車ではなくバスで病院に向かいました。内視鏡の受付に行ってみると、血液凝固の検査を指示されました。「この前来たときにもやったんですけど?」と訊いてみましたが、これは再検査なのだそうで、やっぱり5分半というのはちょっと長かったようです。再度測ってみると3分弱で終了。結局問題なしと言うことなんですが、1回目はわざと長く見せたんじゃないだろうか?と勘ぐってしまいます。再検査を指示すれば病院もちょっとは儲かるわけで。
しばらくして室内に呼ばれ、検査用の衣服に着替えました。前日の食事と一緒に「検査用の紙パンツ」というのを300円くらいで買ってあったんですが、これには大きな穴が開いています。この穴を後ろ側にして穿くわけですね。「緊急時に薬剤を入れるため」の点滴を打たれたまま、横になって1時間くらい先生が来るのを待ちました。この待ってる時間がとても長く感じるんですよね。点滴から止血剤どころか輸血なんかされるようになったらヤバいよなぁ…とか、妙にマイナス思考に走ってしまいます。
先生に「お願いします」と軽くご挨拶した後、看護師の方が腸の動きを抑制するための注射を腕に打ちました。その後、先生が「麻酔のゼリーを塗りますね」と言って指を肛門に突っ込んだ…はずなんですが、何かがするっと通ったような気がしただけで、全然痛みなどはありませんでした。とても即効性の高い麻酔のようです。30秒もしないうちに、直径1センチくらいの内視鏡が入ってきました。異物の入った感触こそありましたが、正直なところあっけないものです…もっと大変なのかと思っていたんですが。隣の部屋で胃の内視鏡検査をしている人が時折苦しそうな声を出しているのとは実に好対照です。
全身麻酔をされているわけではありませんから、意識は実にはっきりしています。診察台の上に寝ている状態のまま、内視鏡の映像をモニター画面で見ることができました。Newtonの記事にあるイラストや写真、テレビ番組などで腸の内部を映しているのは見たことがありましたが、今モニターに映っているのは自分の体の中身。モニターを見ている自分が自分じゃないような変な感覚でした。内視鏡が空気を送り込みながら進むので、お腹は少々張ってきます。時折ガスが肛門から抜けるのもわかります。これはやっぱり気持ち悪かったですね。
3分ほどして、先生に「今どこが見えてるんですか?」と訊いてみました。こう訊くくらいですから、自分では内視鏡がどこまで入っているのか全然わからないんです。先生の答えは「上行結腸の下の方ですね」…つまり大腸の一番奥、盲腸のあるあたりです。想像していたよりもずっと速くてちょっとびっくりしました。その後、先生は小腸もちょっと覗いた後で、バックしながら観察を続けましたが、特に異常らしきものは見あたりませんでした。もちろん、内視鏡で直接ポリープを切り取る最先端医療の現場も見ることはできません。異常がないのは嬉しいんですが、それでもちょっと残念な気もしました。
検査は10分少々で終わりました。しかし、終わったからといってすぐには帰れません。しばらくの間、隣の部屋のベッドで安静にしているように言われます。使った薬が醒めるのを待つわけですね。とは言っても、特に自覚症状があるわけではなく、それこそ車の運転もできそうな気がしました。まあ、乗ってきていないのだから仕方ないんですけどね。それ以前に「自覚がない」というのが一番怖いんです。酒気帯び運転だって酔った自覚はないわけで。
検査結果は改めて外来で最初に診てもらった先生から聞くということで、この日は終了となりました。家に帰って、夕食で丸二日ぶりに食べた米の飯がとても美味しかったですね。
1週間ほど後で、検査結果を聞くために再び病院に出かけました。内視鏡の映像を自分で見ていましたから、今さらわざわざ聞くまでもない…という気もしたんですが、一応プロの目で見てもらった話を聞いてこようと思ったわけです。診察自体は「特に問題ありません」ということで3分ほどで終了。大丈夫だとは思っていましたが、とりあえずほっと一息です。
ただ、予約した時間通りに行ったのに1時間ほど待たされることになりました。「3時間待ち、3分診療」とは言わないまでも、病院なんてたいていそんなものですけどね。まあ、おかげで静かな待合室の中でノートパソコンを使って仕事がはかどったので良しとしましょう。診察料も微々たるものでしたし。
検査を受けたすぐ後くらいに、おもしろいニュースを見かけました。国立がんセンターでは便からガン細胞を直接検知して大腸ガンを検便だけで正確に判定する方法を開発中で、既に実用化の目処が立っているのだとか。便に血が混じっているだけで内視鏡検査をすることはもうなくなるのかも知れませんね。
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