液晶ディスプレイの不思議
今回の話は前回から使っている液晶ディスプレイについて。使い始めは明るく鮮やかな画面に感動していましたが、そんな私の顔が一転曇ったのが、3次元CG作成ソフト・「Shade」を立ち上げたとき。こんな風に画面上のドットがぼんやりにじんでいるのに気が付いたんです。この手のソフトに付き物なのが線画による三面表示やワイヤーフレーム、グリッド、十字カーソル。太さ1ドットの線が数多く画面上に描かれますからね。よく目立つわけです。
実は、こうなる理由には見当が付いていました。問題は、ビデオカードとディスプレイの間をつなぐ信号がアナログRGBであること。液晶ディスプレイの場合、画面上に有限個の液晶素子が並んでいて(L465の場合横1280ドット、縦1024ドット)、これら一つ一つがビデオカード側の信号に対応して制御され、画面を表示する…という非常にデジタル的な構造をしています。これに対して、ブラウン管の場合は真空管に塗られた蛍光体に電子線が当たって発光するわけですから実にアナログ的です。
もともとデジタルで処理されているPC内部の画像が、一度アナログに変換されて、また液晶ディスプレイ側でデジタルに戻される…というのがこれまでのデスクトップ用液晶ディスプレイの不思議な実態でした。PC内部での解像度と液晶画面の解像度が同じでも、一度アナログ信号にしてしまうと、完璧に元のデジタルデータに戻すのはまず不可能です。その結果出てきてしまうのが最初に見てもらったような色のにじみ。調整である程度は改善できますが、それにも限度があります。
問題の解決方法は簡単なこと。ビデオカードからディスプレイへのデータ転送をデジタル化すればいいんです。実際に、ノートパソコンの場合は内部で完全にデジタルで処理されているのが当たり前です。Let’s noteの画面を見た場合にはこんなにじみは全くありません。もともとデジタル接続用のインターフェースを装備した液晶ディスプレイはあったんですが、最近になってビデオカード側にデジタルインターフェースを装備した製品が増えてきて、この接続環境も現実的になってきました。私のL465もDVIと呼ばれるデジタルインターフェースを持っています。せっかくの装備ですから、ここは活用してみましょう。
意外なところで苦労しました
DVIインターフェースを使うには、これを装備したビデオカードが必要になりますが、幸いなことに最近は意外に選択肢が豊富です。今回選択したのはATI・RADEON 8500LEのバルク品。RADEON 8500は最新の3次元技術が投入された高性能ビデオプロセッサですね。名前に「LE」が付いているので実は無印8500より1割ほど動作クロックが低かったりしますが、性能差のそれほどない割にはお得な値段(浜松市内で26,800円で購入しました)で売られています。チップメーカーのATIが自ら作っているカードなので、ドライバ等のサポートの安心感もありますね。実は、これまで使っていたGeForce系と違ったものを使ってみたかった…というのが最大の理由だったりします。
一方、ビデオカードとディスプレイを繋ぐ接続ケーブルを入手するのには苦労しました。浜松市内のパソコン・電化製品ショップをかなり走り回りましたが、どこに行っても「在庫は置いていません」ということでした。ビデオカードも、ディスプレイも結構いろいろと製品を見かけるのに…と不思議に思いつつ、たまたま出張先の静岡でEIZOの純正DVI-Dケーブルを発見してたまらず購入。ちなみに値段は長さ2mで5,980円。普通のアナログRGB用ケーブルなら5本は買えます。
アナログRGBケーブルとDVI-Dケーブルを比べてみると、コネクタ形状が違うのは当たり前のことなんですが、気が付いたのはDVI-Dケーブルの細さ。アナログ信号に比べればノイズに強いデジタル…ということが設計に影響しているんでしょうか。ともかく、細いケーブルは取り回しが楽でいいですね。また、カタログ等を見ると長いケーブルが用意されているのもDVIの特徴だと思いますが、これもデジタルであることの強みでしょう。
えっ…相性?
DVI-Dケーブルを購入したショップで、気になる情報を得ました。DVI-Dによるデジタル接続は、ビデオカードとディスプレイ間の相性がシビアなのだとか。上手く行かない場合には、画面が全く写らない可能性もあるらしいです。もしかしたら、DVI-Dケーブルがあまり店頭に並んでいないのはこれが理由なのでしょうか。とにかくやってみないことには相性はわかりませんから、自宅に戻って早速DVI-Dケーブルを接続してみることにしました。
すると…心配したことが現実になってしまいました。起動時のテキスト表示の中央あたりより下で表示が乱れています。Windows 2000の起動ロゴも見ての通りの状態。実際にWindowsが起動したら1280×1024ドットの画面が綺麗に表示されましたから、実用上の問題はないと言えばないんですが、困るのは BIOSセットアップ画面も乱れてしまうこと。どうやら緊急時用にアナログRGBのケーブルも用意して置いた方が良さそうです。
もちろん、最初に見たような点のにじみはすっかり消えました。人によっては、この画質を「シャープすぎる」と言って嫌うこともあるようなんですが、私は結構気に入っています。シャープな映像をマイルドにするのはそれほど難しいことではありません(境界をぼかすアンチエイリアシング処理は一般的ですよね)が、その逆はかなり難しいですよね。そういう意味で、境界をくっきりシャープに出来ることは重要な性能です。何より、1ドット単位のカーソル移動がアナログディスプレイのときよりもずっと正確に制御できるようになったのは間違いなく環境の改善だと思っています。
(注・2種類のDVIインターフェース)
DVIインターフェースには、デジタル接続専用のDVI-Dと、アナログ信号も一緒に出力しているDVI-Iがあります。コネクタ形状自体は同じで、DVI-I端子にはDVI-Dケーブルを接続することが出来ます。L465に装備されているのはDVI-D入力で、デジタル信号しか入力できません、一方、RADEON 8500LEの出力はDVI-I出力で、ここからはDVI-Dケーブル経由でデジタル信号を取り出すほかにも、DVI-I→D-Sub15ピンのケーブルや変換コネクタを接続することでCRTなどに接続することも出来ます。
(注・RADEONシリーズの一部とL465をDVI-D接続したときの表示が乱れる問題)
ATI RADEONシリーズの一部のモデルとL465をDVI-Dケーブルで接続したときに低解像度の表示が乱れる問題は、L465の製造元・ナナオでも認識されていて(EIZOホームページを参照)、現在調査中だそうです。ケーブルの相性と言うことよりも、どうやらディスプレイとビデオカードの間の問題のようですね。「現在調査中」とのことですが、改善するとしたらどんな方法があるんでしょう?
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